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経済産業省が指摘した「2025年の崖」問題――老朽化した基幹システムの刷新が進まず、DXが停滞すれば巨額の損失が発生する。その背景には、IT投資を巡る日本企業固有の実態がある。本稿では、『全社デジタル戦略 失敗の本質』(ボストン コンサルティング グループ編/日経BP)から、内容の一部を抜粋・再編集。日本企業が犯しやすい失敗とその乗り越え方を解説する。
システム開発プロジェクトの企画構想フェーズには、いくつもの「罠」が潜む。それを回避するために経営層が「すべきこと」とは?
企画構想フェーズの罠を回避する
『全社デジタル戦略 失敗の本質』(日経BP)
企画構想フェーズでは、経営層が関与して、どのような経営課題に応えるか、どの経営目標に貢献するために投資するかを決定する。その上で、ベンダーを選定し、プロジェクト全体のスケジュールを策定した後、次フェーズ(要件定義)の詳細計画を策定する。
この一連の作業を進めるときに、本章はじめで示した罠を回避するためにすべきことを考えたい。
■ 企画構想フェーズの罠(再掲)
- 何を成し遂げたいのかが曖昧なまま投資の意思決定をしてしまう
- 経営層がプロジェクトの中身を理解しないまま、現場主導で進めている
- システムを利用する事業部門がコミットしないまま、IT部門が突っ走っている
- 目的を達成するための実現手段のめどを立てないまま要件定義に進む
- ベンダーの計画をうのみにし、自社として十分な検証をしていない
目的と手段をはき違えない
システム導入の目的として、「老朽化した基幹システムを新システムに刷新する」「全社で情報を一元管理できるデータ基盤を整備する」というような説明がされることが多いが、これは目的というより手段の話である。
本来の目的はどう事業に貢献するかを定義することにあるので、そこで議論を止めずに、「新システムを導入して何を達成したいのか」、「データを一元管理できる基盤を構築して何を成し遂げたいのか」を掘り下げていく必要がある。データ基盤導入の例であれば、データを一元化することにより、例えば事業や部門の壁を越えて顧客に最適なサービスを提供し、顧客満足度の向上や収益の増加を達成したいということであろう。








