北國フィナンシャルホールディングス 常務執行役員 システム統括部長の新谷敦志氏(撮影:榊水麗)

 業務システムをクラウドに移行する企業が増えている。だが、厳重なシステム管理が求められる金融機関でそれを実現するのは簡単ではない。そんな中、石川県の北國フィナンシャルホールディングス傘下の北國銀行は、2021年に国内で初めて銀行の基幹業務を担う勘定系システムのフルクラウド化を実現した。この決断の裏には、地方銀行としての生存戦略があったという。北國フィナンシャルホールディングス 常務執行役員 システム統括部長の新谷敦志氏が、その意味を語った。

クラウドでなければ、新興のフィンテック企業に対抗できない

――北國フィナンシャルホールディングス(以下、北國FHD)では、2017年にクラウドファーストの方針を掲げ、地銀の中でいち早くシステムのクラウド移行を進めてきました。なぜこのような決断をしたのでしょうか。

新谷敦志氏(以下敬称略) 細かく振り返ると、2015年頃から勘定系システムのクラウド化を考えていました。もちろん当時は、そうした動きを取る企業はほとんどいませんでしたし、現在も、金融機関ではクラウドの対極的存在であるオンプレミスやメインフレームを好む傾向にあります。

 その中でクラウドを選択した理由の1つは、地銀として、他の銀行とは差別化したサービスを提供したかったからです。
 
 私たちは、2007年からシステム開発の内製化を進めてきました。社内にシステム部を新たに立ち上げ、それまで行っていた開発のアウトソーシング(外部委託)からの脱却を図ったのです。これはアウトソーシングが悪いということではなく、他行とは違う価値を作りたいからこその転換でした。

 これ以来、私たちの生命線は「開発力」となっており、それを差別化要素にして生き残っていきたいと考えています。だとすると、開発力を下支えするシステムも、より便利で生産性の高いものにしなければなりません。そう考えた時にクラウドという結論に至りました。

――経営戦略を踏まえての決断だったと。