
中国の台頭、国際的なサイバーセキュリティーリスクの増大、欧米の規制強化といった、国際情勢が、どのようなサプライチェーンリスクにつながるのか。製造業を中心に世界各地の動向に通じる、ものづくり太郎氏が、最新のトレンドと共に、日本の製造企業がとるべき打ち手を解説する。
産業ロボット、OT領域で中国勢の台頭が意味するもの
製造業の国際情勢を語る切り口として、私はまず、中国企業の台頭を挙げたいと思います。
今、制御機器領域の中国メーカーが非常に力を付けており、日本や欧州と遜色なくなっています。下図のコネクター製品は、2つが欧州メーカー、1つが中国メーカーのものですが、見分けがつきません。
また、コネクターのような個々の制御機器にとどまらず、OT(Operational Technology:オペレーションテクノロジー=工場などのシステムや設備を制御・運用する技術)をつかさどる機器にも中国勢が進出しています。
例えば、イノバンスという中国の制御機器メーカーは、サーボ、ロボットに加え、HMI※1やPLC※2を製造しており、三菱電機やフランスのシュナイダーエレクトリックと同等の商品セグメントを展開しています。
さらに、ロボットに注目すると、イノバンスのホームページには、日本製のロボットに似たものが多数、展示されています。同社は2015年以降、モーターの動きを制御するモーションコントローラー、軸に沿って動くスカラロボット、6つの関節を持つ6軸ロボットを相次いでリリースしており、売り上げも右肩上がりです。
※1 HMI(Human Machine Interface:ヒューマンマシンインターフェース):機械の状態を可視化し、操作を容易にする装置
※2 PLC(Programmable Logic Controller:プログラマブルロジックコントローラ):機械や設備を制御するための装置。シーケンサ(Sequencer)とも呼ばれる。
グローバルのロボット市場のシェアは、2019年時点で半分を中国企業が占めています。日本はまだ2位につけているものの年々シェアを落としており、しかもその多くが外需に依存しています。
一方、中国は「世界の工場」とうたわれる、世界最大のロボット消費地です。中国におけるロボット販売台数のシェアは、2019年では海外メーカーが71%でしたが、中国は政策として産業ロボットの内製化を推進しており、2020年に中国のシェアが30%台に乗り、近年は4割前後になってきています。