ヤマトホールディングス イノベーション推進機能シニアマネージャー、ヤマト運輸政策企画室担当室長の齊藤泰裕氏(撮影:酒井俊春)

 日本初の路線事業の立ち上げや、現在ではヤマトグループの主力事業にまで成長した「宅急便」の発売など、ヤマトグループは数々のイノベーションを創出してきた。その精神は今も受け継がれ、現在も「豊かな社会の実現に貢献する」という経営理念の下、外部企業とも連携しながら新たな価値の創造に取り組んでいる。今回、イノベーション推進機能の齊藤泰裕シニアマネージャーに、最新の取り組みと成果について話を聞いた。

多様なパートナーとともに、オープンイノベーションを加速

――ヤマト運輸は2020年にオープンイノベーションを推進する部門を立ち上げました。ヤマトグループの中でイノベーション推進機能はどのような役割を担っているのでしょうか。

齊藤泰裕氏(以下、敬称略) イノベーション推進機能には、大きく2つの機能があります。1つは新規事業の立案機能、もう1つは投資機能です。

 新規事業の立案では、自動運転やドローンの活用など、まだ世の中に存在しないビジネスの創出に挑戦しています。もちろんグループ内で完結するプロジェクトもありますが、自社のリソースだけでは実現が難しいものも多いため、社内外のパートナーと連携し、多様な形で新しい価値創出を目指すオープンイノベーションに力を入れています。

 投資面では、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)ファンド「KURONEKO Innovation Fund」を通じて、協業の可能性や自社とのシナジーが期待できる企業に投資を行っています。2020年4月に1号ファンドを、2024年5月には約80億円規模の2号ファンドを設立し、国内外のスタートアップへの分散投資を進めています。

 また、CVCファンド以外にも、世界の動向に目を向けながら、各分野で強みを持つ外部のベンチャーファンドにも投資しています。

 現在、イノベーション推進機能には10人を超えるメンバーが在籍し、アメリカにも常駐しています。全員が現場での経験を生かしながら取り組んでいます。