5月27日午前、株主総会に向かう人々(写真提供:共同通信社)

 2025年5月27日にセブン&アイ・ホールディングス(以下、セブン&アイ)の株主総会が開かれ、スティーブン・ヘイズ・デイカス氏が社長に、創業家出身の伊藤順朗副社長が会長に就任することをはじめとした新経営体制案が承認された。カナダのコンビニ大手、アリマンタシォン・クシュタール(以下、ACT)からの買収提案を受けているセブン&アイの今後はどうなるのか。オーナーの声や他コンビニと比べた業績推移、外資による買収の影響など多角的な観点から、元コンビニの店長で流通ジャーナリストの渡辺広明氏が検証、解説する。

「不安」を感じるオーナーのリアルな声

「創業家の伊藤順朗会長はすごく良い人なのだけど、コンビニ事業での実績がなく心配。デイカス社長も西友を再建できなかった人だし不安……」

 セブン&アイの株主総会が終わった直後、セブン-イレブンのオーナーから筆者にこんな連絡があった。

 その後も、他のオーナーからの意見もおおむね同じような内容だったが、「セブン-イレブンは店員が商品をスキャンするセミセルフレジなので、接客が必要。人件費も上がる中、ロイヤリティを見直してほしい」「店舗巡回員を中心とする本部社員の危機感がなさ過ぎる」など辛辣(しんらつ)な意見も数多くもらった。

 一方、買収を目指すACTについても、オーナーが納得するような明るい未来を感じる提案が見えていないため「どっちもどっち」と、今後の店舗運営に不安を感じているオーナーが大多数のようだ。

 セブン&アイとACTは、秘密保持契約が結ばれたことが2025年5月1日に発表され、実質的に敵対的買収はなくなったことになる。一定期間現状を維持することを約束する「スタンドスティル条項」が盛り込まれたことで、セブン本部は一安心の部分もあるが、主力のコンビニ事業は98%以上がフランチャイズで運営されている。

 そのため、両社それぞれのビジネス上の思惑も、フランチャイズオーナーが納得しない限りは砂上の楼閣となり、一挙に事業が不安定となっていく可能性が高い。

 現状国内のセブン-イレブンは、ローソンやファミリーマートの後追いとなった増量企画が、増量の規模が小さく消費者の期待を下回ると話題になったり上げ底容器の論争が起こったりするなど、消費者の不満が SNS上にあふれている。では、実際の数値はどうだろうか。