荏原製作所 執行役 CIO 兼 情報通信統括部長の小和瀬浩之氏(撮影:酒井俊春)

 映画『ゴジラ-1.0』のVFX(視覚効果)を担当した制作会社の出身者に、デザイナーやコピーライター──。荏原製作所では今、こうした人材を内部に抱えてDXを進めている。その狙いはどこにあるのか。取り組みをけん引する同社執行役CIO兼情報通信統括部長の小和瀬浩之氏と、経済産業省による「グローバル競争力強化に向けたCX研究会」の座長を務めた日置圭介氏、会の発足から携わった経済産業省の片山弘士氏が意見を交わした。

70%の時間削減を達成した「設計の自動化」

――荏原製作所は経営インフラを整備するDXとしてグローバルでERP導入を進めています(前編リンク)。そもそも荏原製作所ではどのような方針でDXを行ってきたのでしょうか。

小和瀬浩之氏(以下敬称略) 経営戦略や事業戦略と一体になってIT戦略を進めてきました。トップをはじめ、経営陣がITやDXの重要性を理解し、経営、事業部門、IT部門が三位一体で取り組んできたといえます。実際に、当社の長期ビジョンや中期経営計画を見ても、各領域でITに関する記述があります。

 なぜなら今の時代、ITは経営や事業と密接な関係にあるからです。他の日本企業においても、それまでCIOを務めてきた方が経営の中核のポジションに就くケースが増えていますよね。

日置圭介氏(以下敬称略) おっしゃる通りです。個人的にはちょっと遅いよと思っていますが、とりわけグローバルに事業を展開する製造業では、これまで以上にITと経営は切っても切り離せないものになっています。必然、各社のCIOが果たす役割も大きくなっています。

小和瀬 当社の具体的な取り組みとしては、いわゆる「守りのDX」と「攻めのDX」を両軸で進めてきました。ERP導入をはじめ、グローバルで経営情報の見える化を進めているのは守りのDXに当たります。そうした土台作りを行った上で、近年は「攻めのDX」でもさまざまな成果が出てきました。

――「攻めのDX」について、どのような事例がありますか。