
空調機器で売上世界トップのダイキン工業(ダイキン)。同社は今、機器の販売だけでなく、ソリューションの提供へと戦略を転換中だ。営業部門では、渋谷の街を舞台に、空調機から得られるデータを活用した環境課題の解決に挑んでいる。
新たなビジネスの柱をどのように確立しようとしているのか。「両利きの経営」の提唱者チャールズ・オライリー教授の日本における共同研究者・加藤雅則氏が、ダイキンのキーパーソンへのインタビューを通じ、新事業探索の秘訣を探る。
スペックインからソリューションへ
加藤雅則氏(以下、敬称略) ダイキン工業(ダイキン)は、空調機器の販売では圧倒的な強さを誇っていますが、最近では、社会課題起点の新しいビジネスの創出にも力を入れています。渋谷の街を舞台に暑さ対策や街全体の省エネを推進する「SHIBUYA GREEN SHIFT PROJECT」(シブヤグリーンシフトプロジェクト)は、その象徴とも言えるでしょう。そもそもどういう問題意識からこのような取り組みが始まったのでしょうか。
松田哲氏(以下、敬称略) われわれの部署は設備営業を担当しており、主にビルや工場、商業施設などの大規模建築物向けに空調設備を提案しています。その中でもダイキンの強みと言えるのが、設計段階から当社製品を織り込んでもらう「スペックイン活動」です。50年近く前から専門チームを作って、設計事務所などに働きかけを続けてきました。
現在はそれに加え、全社戦略として掲げる「ソリューション事業」の拡大に力を入れています。これは保守・点検からシステム更新まで、空調バリューチェーン全体でソリューションを提供するもので、空調機器の販売だけにとどまらない「コト売り」のビジネスモデルの確立を目指しています。

加藤 ソリューション営業は、ダイキンが長年磨き上げてきた営業スタイルをバージョンアップする取り組みですね。