写真提供:DPA/共同通信イメージズ

「ものづくり大国」として生産方式に磨きをかけてきた結果、日本が苦手になってしまった「価値の創造」をどう強化していけばよいのか。本連載では、『国産ロケットの父 糸川英夫のイノベーション』の著者であり、故・糸川英夫博士から直に10年以上学んだ田中猪夫氏が、価値創造の仕組みと実践法について余すところなく解説する。

 今回は、トヨタ製品開発システムにおける「VE(Value Engineering)」活動に注目。徹底したコストダウンをかなえる、企画設計段階のある特徴とは?

VEの始まりとなった「アスベスト事件」

 MOT(技術経営:Management of Technology)のプロセスをベースに、トヨタ製品開発システムと創造性組織工学(Creative Organized Technology)の2つの価値創造システムのプロセスを比較した(第15回 参照)。

 その結果、それぞれの「開発」のフェーズにおいて創造的なアイデア(オルタナティブ=代替案)を生み出す手法が異なり、「VE(価値工学:Value Engineering、最低のコストで必要な機能を達成することを目指す考え方)」と「システム合成・分析」という異なるアプローチが用いられていることが明らかになった。これは価値創造の核心部分になるため、より詳細な解説を行っていきたい。