北の達人コーポレーション 代表取締役社長 木下勝寿氏(撮影:内藤洋司)

「北の快適工房」ブランドの健康食品や化粧品を開発、販売する北の達人コーポレーション。Webマーケティングを駆使し、2016年からの4年間で売上を約5倍の100億円に伸長させた。しかし、同社を待っていたのは、急成長の反動による業績悪化だった。組織が機能不全に陥り、新規購入者が全盛期の6分の1にまで激減する中で取り組んだ組織変革とは──。2023年11月に書籍『チームX(エックス) ── ストーリーで学ぶ1年で業績を13倍にしたチームのつくり方』(ダイヤモンド社)を上梓した北の達人コーポレーション代表取締役社長 木下勝寿氏に、組織の機能不全を脱するための改革術について話を聞いた。(前編/全2回)

本稿は「Japan Innovation Review」が過去に掲載した人気記事の再配信です。(初出:2024年1月22日)※内容は掲載当時のもの

急成長の反動で「ゼロから1を生み出せなくなっていた」

──著書『チームX(エックス)』では、「組織の機能不全」による業績悪化と、試行錯誤の末に成し遂げたV字回復までの物語りを紹介されています。業績が右肩下がりになっていた当時、組織に何が起きていたのでしょうか。

木下勝寿氏(以下敬称略) 当時の出来事を振り返ると、そこには2つの問題があったと考えています。1つは、組織の急拡大の中で「人材育成の遅れ」が出ていたこと。もう1つは、「行き過ぎた効率化」のせいで見た目が同じような広告が増えてしまっていたことです。

 1つ目の「人材育成の遅れ」が起きた背景にあったのは、業績が伸びる中での急激な社員数の増加です。基礎的な新人教育をほとんど行わずに現場配属していたため、各々が自己流のやり方で仕事をしている状況でした。また、配属先の先輩社員も新人の指導に明け暮れて自らの業務に手が回らない、という悪循環も起こっていました。

 もう1つの「行き過ぎた効率化」については、効率的にWeb広告の成果を高めようとするときに「過去のデータを計測し、成功事例を踏襲する」という手法が当たり前になってしまったことが関係しています。過去の「当たり広告」をそのまま踏襲すれば、一時的には成果が出ます。しかし、同じような広告ばかりを出しているとユーザーも離れていきますし、広告を作る側も新しいものを生み出せなくなってしまいます。

 つまり、社内のメンバーは「1を10にすること」は得意でも「0から1を生み出すこと」ができなくなっていたのです。これは、当社の問題であると同時に、業界全体の問題でもあったと思います。

 結果として、当社は見た目の売上が好調であったにもかかわらず、新規購入者数の減少がじわじわと進行していました。ある商品だけの集客人数が減っているのであれば「その商品の寿命なのだろう」という判断になりますが、全ての商品の新規購入者数が伸び悩んでいたのです。何か根深い問題が起きていると感じました。