コクヨヒューマン&カルチャー本部 働き方改革推進総務部 コミュニティデザインユニット ユニット長の江崎舞氏(撮影:宮崎訓幸)
2011年 コクヨに入社し、企業のイノベーションセンターやコワーキングスペースなど働く環境の設計・デザイン業務に従事。デザインアワードの受賞や雑誌掲載の実績多数。2021年8月より働き方改革タスクフォースとして活動中

 企業が主力事業から新たな挑戦へと舵を切る瞬間には、必ず大きな決断と改革が伴う。新機軸に挑む企業の背景や経緯を掘り下げ、キーパーソンとその挑戦の舞台裏に迫り、未来を切り開くリアルな姿を伝える本連載。

 前回までに続き、2025年で創業120年を迎えるコクヨを取り上げる。20年ほど足踏みしていた売上約3000億円の壁を超え、2023年からは再び成長軌道を描き始めた。老舗企業に今どのような変化が起きているのか。今回から2回にわたり、コクヨが作った働き方の実験場「THE CAMPUS(ザ・キャンパス)」プロジェクトのコアメンバーとして構想段階から携わった、ヒューマン&カルチャー本部働き方改革推進総務部の江崎舞氏に話を聞く。

コクヨの実験場「THE CAMPUS」とは?

 東京・JR品川駅からほど近い所に、コクヨのオフィスである「働く・暮らす・学ぶ」の実験場「THE CAMPUS(ザ・キャンパス)」はある。元はコクヨ東京品川オフィスおよび東京ショールームからなる2棟の自社ビルだったが、これらをリニューアルし、2021年よりコクヨが目指すこれからの「働く・学ぶ・暮らす」環境を具現化した空間として生まれ変わった。

 THE CAMPUSについて、コクヨのコーポレートサイトでは「コクヨが『NEXT EXPERIENCE』(=長期的視点で社会課題解決に取り組んでいくこと)の活動を通じて、未来につながる価値を探究するため、さまざまな専門性や経験を持つ人々と全館通して実験・実践する場所となることを目指しています。」と紹介されている。

 THE CAMPUSという名称は、単にコクヨのロングセラーである「Campusノート」の名を冠したというわけではなく、学校のようにさまざまな人が集い、共同で活動する空間や雰囲気全体を指している。

 1階のショップ兼カフェを訪れると、そこに置かれたストリートピアノで常連客の男性がスティーブン・フォスターの「故郷の人々」を練習していた。ふと、中学校の放課後の記憶がよみがえり、ここがオフィスの一部であることを忘れてしまいそうになる。