②の基幹インフラに関しては、対象分野を電気・ガス・石油・水道・鉄道・貨物自動車運送・外航貨物・航空・空港・電気通信・放送・郵便・金融・クレジットカードの14分野とし、重要設備の導入等をする際には事前に計画書を届け出ることなどを義務付けている。
③の官民の技術協力とは、宇宙・海洋・量子・人工知能(AI)などの分野を想定し、特定重要技術の開発や研究に対し必要な情報提供や資金支援を実施するとしており、そのために協議会やシンクタンクを設置。前者では「資金提供し得るかどうか」を判断し、後者は「特定重要技術になり得るか」を見定め、いずれもメンバーには守秘義務を求めるとしている。
④の特許非公開化については、これまでの特許が公開を前提としていることから、「安全保障上の観点から特許出願をあきらめざるを得なかった発明者に特許法上の権利を受ける道を開く」とし、機微技術の流出を防止するというものだ。
一方で、経済安保の中心となるのは、戦略的産業をいかに育て、守っていくかということである。その中には半導体や蓄電池、医薬品といったものが含まれている。例えば半導体にしても多様な種類があり、医薬品もワクチンから風邪薬まで多岐にわたる。これらの中でどれが重要で、何を守らなければいけないのか、国の戦略としてどこを目指していくべきなのかをはっきりさせることは欠かせない。
その際に気をつけなければならないのは、単に競争力の弱い産業を守るだけの政策になってはいけないということだ。何らかの形で海外に生産拠点を移している企業があった場合、それは日本で生産するよりも、海外のほうが経済的合理性があるからだろう。
これを国内に戻す場合、何を意味するかを考えなければならない。「国外で生産せざるを得ない重要な産業だから、国内に引き戻すための支援を強化しよう」という発想になった場合、そのリソースをいかに効率的に確保するのかという問題もある。コストがかかっても安全保障上、生産拠点が国内にあったほうがいいのか、検討する必要があるだろう。
経済安全保障は基本的には「守り」の姿勢だが、時には攻めの議論も必要になる。どの産業を伸ばしていくのか、不可欠性を維持するために何が必要なのか。どのようにグローバル市場で強みを生かしていくかも検討しなければならない。
<連載ラインアップ>
■第1回 マスク、ワクチン、半導体…コロナ禍と米中対立は、いかに新たな外交的駆け引きの「道具」を生み出したか?
■第2回 「攻め」のESと「守り」の経済安保、政府が示す自国の産業を守っていくための4つの戦略とは?(本稿)
■第3回 習近平が進める「千人計画」、技術流出へのアメリカの対抗策と日本に欠かせない「戦略的不可欠性」とは?(12月5日公開)
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