マツダはスバルほどには急成長していませんが、マツダも自動車業界において業績が良好な会社と言っていいでしょう。マツダは車好きな人向けのカッコイイ車に特化しました。日本で一番売れているカテゴリーであるミニバンの市場も捨てて、集中化戦略をとりました。
集中化戦略はリスクのある意思決定ですが、スバルもマツダも市場における自らの立ち位置を明確にすることによって成功しました。正に「業績のカギは集中である」ということであり、どこかで経営陣がそれを意思決定したのです。
次はビール業界を見てみましょう。下図(図表3-6)はアサヒグループホールディングス株式会社(以下「アサヒ」) とキリンホールディングス株式会社(以下「キリン」) の2008年12月期のPLとBSです。
売上高も総資本もキリンの方が大きいことがわかります。特にこの当時のキリンは、海外拡大・M&A*71拡大戦略をとっていました。日本の人口は将来減少していくことが明らかで、若い世代のビール離れも進んでいました。キリンは国内市場での成長戦略は描けないと判断し、海外の飲料メーカーをたくさん傘下に収めていました。
飲料だけではありません。キリンは傘下にキリンファーマという製薬会社を持っていましたが、いまはキリンファーマという会社はありません。協和発酵キリン(現在は協和キリン)という会社になりました。これは、キリンファーマの4倍くらいの売上高のあった協和発酵とキリンファーマが一緒になって協和発酵キリンという会社になると同時に、その協和発酵キリンの筆頭株主にキリンが就いたのです。
当時のキリンはこのような海外拡大・M&A拡大戦略をとっていたこともあり、BSの大きさが急拡大していた頃でした。
それが、2023年12月期には下図(図表3-7)のようになります。アサヒが急拡大していることがわかります。特にBSが飛躍的に大きくなっています。これは、その後アサヒが海外拡大・M&A拡大戦略をとったからです。