コロナ禍を経て、ハイブリッドワークが注目されるようになるなど、働き方は大きく変化した。企業価値を高めるためには、変化しワークスタイルを踏まえた上で、ワークプレイスを再設計していく必要があると、東京工業大学工学院経営工学系教授で一橋大学ソーシャル・データサイエンス研究科教授の妹尾大氏は語る。
以下では、働き方を起点にした企業価値を高めるためのワークプレイスの設計について、妹尾大氏が語った講演の骨子をお届けする。
※本稿は、Japan Innovation Review主催の「第2回 ワークプレイスイノベーションフォーラム」における「基調講演:企業価値を高めるためのワークプレイス設計/妹尾大氏」(2024年9月に配信)をもとに制作しています。
コロナ禍で変化した働き方を起点にワークプレイスを再設計する
新型コロナウイルス感染症の影響で、オフィスの意義を根本的に再考する機会が私たちに与えられたと思います。ワークスタイルは大きく変化し、ワークプレイスのあり方について見直しを迫られている方も少なくないのではないでしょうか。
そこで本日は、新たな働き方・ワークスタイルを起点として、企業価値を高めていくことのできるワークプレイスの設計について、提案したいと思います。
ワークプレイスを検討するにあたって、そもそも「ワーク」とは、どのような活動をいうのか、最初に定義したいと思います。ここでは「成果を産出する活動」をワークとします。
ワークにはさまざまな種類があり、複数で行うチームワークもあれば、一人で行うソロワークもあります。また、対面で行うワークや遠隔で行うワークといったものもあるでしょう。
こうして見てみると、現在、広くいわれているハイブリッドワークとは何も新しく生まれた働き方ではなく、今まで注目されずに陰の存在としてあったワークに、改めて光が当たるようになったといえます。
さらに、ワークは「自己裁量」の視点からも3つに分類できます。自己裁量の低い順に挙げると「マニュアルワーク」「スキルワーク」「ナレッジワーク」の3つです。
マニュアルワークは、何をどうやるかがあらかじめ決められている働き方です。スキルワークでは、何をやるかは他人が決め、やり方は働く人の裁量に委ねられます。ナレッジワークは、何をやるかもやり方も自己裁量で行うワークです。
昨今は、脱マニュアルワークの動きが加速し、スキルワークやナレッジワークといった働き方をする人が増え、以前より許容されているように感じています。
ワークプレイスを考える際には、このようなワークを踏まえて設計することが大切です。