日本の小売業界の「2強」セブン&アイ・ホールディングス(HD)とイオン。セブン&アイの2024年2月期の売上高は約11兆4700億円、イオンは同9兆5535億円と他社を大きく引き離し、圧倒的な存在感を示すが、営業利益を比べると実は倍以上の差があり、両社の稼ぎ方は大きく異なる。2社の収益構造はどこが違うのだろうか?
『決算書ナゾトキトレーニング』(PHP研究所)、『決算分析の地図』(ソシム)などの著者で、財務コンサルティングを行う村上茂久氏が、前編に続き、両社のビジネスモデルを「超多角的」に読み解く。2社の経営戦略を特徴づける3つの視点とは?(後編/全2回)
■【前編】2大小売グループ、セブン&アイとイオンの稼ぎ方はどこが違うのか? 『決算書ナゾトキトレーニング』の著者が大解剖
■【後編】セブン&アイとイオンの経営戦略の違いが際立つ3つの視点とは? 『決算書ナゾトキトレーニング』の著者が徹底分析(今回)
セブン&アイとイオンの比較から見る両社のビジネスモデルの違い
ここまでセブン&アイ・ホールディングス(以下、セブン&アイ)とイオンの売上高およびセグメント利益の構成をそれぞれ見てきました。以下では、これらの構成の違いから両社のビジネスモデルおよび経営戦略の違いを、①事業ポートフォリオ、②金融事業、③海外事業の3つの視点から考察します。
まずは事業ポートフォリオについてです。一昔前だと、セブン&アイはイトーヨーカ堂に代表されるように総合スーパーのイメージがあったかもしれませんが、現在のスーパーストア事業は売上高の13%、利益に至ってはわずか2.5%しかありません。
他方、事業の核となるのが、コンビニ事業です。売上の7割以上は海外コンビニ事業ですが、利益率は3.5%と低く、国内コンビニ事業の27.2%の利益率が利益に大きく貢献しています。つまり、量の海外コンビニ、質の国内コンビニと言えます。
他方、イオンはセブン&アイと異なり、総合スーパー (GMS)、スーパーマーケット、ドラッグストア等と幅広く小売業を手掛けています。しかしながら、これら3事業における利益率は、それぞれ0.8%、1.5%、3.4%と高くはありません。同じ小売でも、セブン&アイはフランチャイズを中心にコンビニ事業を展開していることで高い利益率を誇っている一方、イオンの小売の売上高は直営が中心のため、利益率に大きく差が出ています。