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 物流と地球社会を持続可能にするために、今何が必要なのか。デジタル先端技術から経営戦略まで、世の誤解・曲解・珍解を物流ジャーナリスト・菊田一郎氏が妄想力で切りさばく連載企画。

 第5回からは2回にわたり、物流システムの新たなコンセプト「フィジカルインターネット」(PI)について考える。その①となる今回は、この構想を社会インフラとして実現するための鍵となる「モノの標準化」について解説する。

改めて、フィジカルインターネットとは?

 フィジカルインターネット(Physical Internet、略してPI=パイと読む)について、今さら詳しく説明する必要はないかもしれない。だが政府の「フィジカルインターネット実現会議」や、推進組織である一般社団法人フィジカルインターネットセンター (JPIC)の公的資料だけだと、初見者が全体像をクリアに理解することは容易でない気もする。そこで一般への理解を促進するため、筆者流に情報を整理・補足・アレンジしたのが、以下のPI解説・最新版である。

◆フィジカルインターネットとは?(PI解説・キクタ案)◆
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一般的な情報の「インターネット」(デジタルインターネット)においては、
①発信者の送りたいデジタル情報が、
②小サイズの標準パケットに分割され、
③標準化された通信方式とプロトコルによって、
④多数の主体が利用する共有回線で、複数のサーバーを経由する最適経路   
 をリレー電送され、
⑤到着地で分割されたパケットが統合され、
⑥受信者の元に届けられる。
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これに対し「フィジカルインターネット」は、上記の基本構造をフィジカルなモノに適用しようという企て。

 その理想像は、
①デジタル情報に代えて発荷主が送りたい「モノ=貨物」を、
②工場など生産地や各種倉庫で標準的な荷姿(ユニットロード)に仕立
 て、
③トラック、貨車、船舶、航空機などの輸送手段に載せて運ぶ際には、標
 準化された物流情報に基づく標準化されたプロセスによって積み下ろ 
 し・検品などの作業とリアルタイムトレースを行い、
④その際、他社の標準荷姿の貨物をマッチングして混載(共同輸送)する
 ことで往復の積載率を最大化=GHG排出を最小化し/日帰り可能な短中
 距離にある各地の物流センター・ハブ拠点等へと順次リレーして運び、
⑤到着地近くの拠点で仕分け・再統合して、
⑥着荷主・顧客の元に届ける
(図表1)

 その目的は、「働く人と地球社会の環境保全による物流の持続可能化」だと私は考える。

図表1 フィジカルインターネット(PI)実現会議が示す到達イメージ

(出所)PI実現会議の資料
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