いつも本番と思ってやらないとだめ
樋口コーチは2022年にグランプリ東海クラブから独立し、自身のクラブ「LYSフィギュアスケートクラブ」を立ち上げる。そのとき上薗もLYSに加入した。
「先生が好きだったので、教えていただきたかったので迷いはなかったです」
樋口コーチの印象を尋ねるとこう答えた。
「きれいでおしゃれで、すごく愛がある先生だなと思います。厳しいところは厳しいと思うんですけど、その厳しさが優しさにつながっているのですごく好きです」
成長を促したのは、周囲ばかりではない。上薗自身の姿勢にもあった。
——練習は好きですか?
尋ねると即答した。
「はい」
そして続ける。
「調子が上がらないときとかは悔しいこともあるんですけど、それでもやるって決めたらやらないと駄目だと思っています。やっぱり練習でやってきたことが試合に出ると思うし、練習していないと試合を気持ちよく終えられないので、練習は大事にするようにしています」
以前、樋口コーチに尋ねたとき、上薗についてこう語っていたのを思い出す。
「素直であることがよさです。一見素直だけど本心では受け入れていないだろうな、という子もいますが、あの子はほんとうに素直に受け入れる。みんなに『本番だけ頑張るんじゃなく練習通りやればいいと思ったほうが気が楽でしょう、だったら練習でいつも本番と思ってやらないとだめ』と言っていますが、そのまま受け入れられる」
教えられた言葉をまっすぐ受け止めて練習に取り組み吸収してきたからこそ、今日まで階段を上がってきた。上薗自身は、ここまでの歩みをこう語る。
「ジャンプの跳び方だったり、スケーティングだったり、1つずつ丁寧に教えてくださって、崩れたときでもすぐに修正してくださったり、教わったことをやることで今があるんじゃないかなって感じています」
華やかに彩られたシーズンを過ごし、今、その先へ向かおうと取り組んでいる。
「まだ降りられていませんが、トリプルアクセルの練習をしています」
むろん、ジャンプに限らない。もっと表現も、スケーティングも、あらゆる面を伸ばしたいと考えている。理想として思い描くスケーター像があるからだ。
「皆さんに見てもらえるのが好きなので、表現もできて人に感動を与えられる選手になりたいと思っています。フィギュアスケートが好きという思いを大切にしたいです」
3月30日に始まる「スターズ・オン・アイス」、5月からの「ファンタジー・オン・アイス」(幕張、愛知公演)への出演も決定した。国内外のトップスケーターとの共演もきっと糧にするだろう。
まっすぐな心とともに歩む上薗恋奈の前には、広がる未来がある。