前回は、「新規ビジネス」の発想法について紹介した。
日本の製造業にはたくさんのリソースが眠っており、自社で積み上げたノウハウや緻密なデータは、同業他社だけでなく他業界の企業にとってもお金を払ってでも手に入れたい価値があるものであることをお伝えした。
製造業の場合、まさしくそこに新規事業の種が眠っている。「作る」の周辺に目を向け、今一度、自社の中に眠る価値を見直してもらいたい。
さて今回は「新規ビジネス」について、その具体的な事例をお伝えしていく。
「工場の可視化」を外部に提供した旭鉄工iSTCの「iXacs」
自動車の金属加工部品メーカーである旭鉄工は、自社工場の稼働状態、最適値の可視化を実現し、生産性を劇的に向上させた。
ご存じの方も多いと思うが、同社の代表 木村哲也氏はトヨタ自動車で21年間勤務し、生産調査部時代に「トヨタ生産方式」を学び、内製工場および社外の指導を経験している。
その後、旭鉄工の代表に就任するのだが、当時の社内の閉塞感や売上低迷による士気の低さに危機感を募らせたそうだ。
なぜ生産性が上がらないのか。トヨタ自動車で「カイゼン」の最前線にいた木村氏には、工場内の至る所に、その要因が推察できた。
なにせ、機械がよく止まる。「ドカ停」なら会社も問題視するが、いわゆる「チョコ停」は、そのまま見過ごされていくことが多い。少し待てば、また何事もなかったように動き始めるからだ。「時間当たり出来高」に強いこだわりを持たない組織では、こうした光景が常態化してしまう。
しかし、そうした「ちょこちょこ」の積み重ねが、年間で換算すると膨大な損失につながることを、木村氏は経験上知っていた。
そこで、設備にセンサーを取り付け、稼働状況をデータ化し、不具合を未然に検知し対策する。当時はまだそうしたセンサーやモニターも世の中にはなく、一から自社で製作した。
これが、当時の旭鉄工の新規事業で、やがて別会社となった「i Smart Technologies(iSTC)」の出発点である。
iSTCが開発した工場のIoTシステムが「iXacs(アイザックス)」だ。(下の図)