実行可能な生産計画で安定生産につなげるには
生産管理部門は、生産数量の提示のみではなく、工数計画を立案し、実行可能な生産計画を提示しなければならない。工数計画とは、負荷(仕事量)と能力(人・設備)のバランスをとるために立案するもので、生産計画の基本となる計画である。
例えば、日程計画が策定されたとしても、負荷が能力より大きければ、計画通り製品や部品が生産されず納期遅れが発生する。逆に、能力が負荷より大きければ、人や設備が遊ぶことになり、ムダが発生する。このように負荷と能力のバランスをとることは、納期順守とコスト低減を同時に実現するための前提条件である。
工数計画は、期間別生産計画の各段階において実施する。それぞれの期間に対応する工数計画の目的は、下図の通りである。
また、工数計画の立案は、
(1)工程能力の算出
(2)負荷計算
(3)能力と負荷の調整
の3つのステップで実施するが、その際、負荷や能力を表す基準として、時間や数量・金額が用いられる。大日程計画段階では、数量や金額で大まかに把握するのに対し、小日程計画では、時間表示で詳細な検討が行われることが多い。また、作業時間に比例して生産量が増減するような職場は数量表示が適しているなど、職場の特性や工数計画の目的に応じた基準を用いることがポイントである。
負荷は、基準工数(1個を生産するための工数)に生産計画で決まった生産数を掛けて計算し、生産計画の対象期間内の個々の負荷を加算し、トータルの負荷を算出することを負荷山積みという。負荷山積計算は、一般的に次の通り製品別・工程別に実施する。基準工数は、製造実績、進み遅れの要因分析に基づき、メンテナンス、管理することが重要である。また、同時に抜本対策としての生産性改善や品質改善も現場と一体となって取り組めると良い。
そして、下記グラフのように負荷と能力を対比することでそのギャップを明らかにし、両者を調整することで余力(能力ー負荷)がゼロに近づけるよう対策を実施する。能力と負荷の調整方法は、状況に応じて次のような対応策があげられる。
負荷が能力よりも大きい場合には、
(1)残業や休日出勤の活用
(2)他職場からの応援か、他職場へ仕事を回す
(3)臨時工(パートタイマー)の活用
(4)外注工場の利用
(5)(1)~(4)でも不足する場合は、仕事を減らすか、後に繰り延べする。
負荷が能力よりも小さい場合には、
(1)間接作業(雑用)の実施
(2)他職場へ応援
(3)外注から内作への転換
(4)仕事を増加させる
(5)長期的に能力不足が予想される場合は、工場の拡張や人や機械の増加を計画し、人的能力・設備能力の拡大を図る。
以上のような対策を行い、最適な調整ができた段階で対象期間の人員・設備への生産品の割り振りができ、工数計画が完成する。
コンサルタント 茂木 龍哉 (もぎ たつや)
SX事業本部
シニア・コンサルタント
生産、物流機能領域を中心に、サプライチェーンマネジメントの視点から、在庫適正化、生産管理システム導入、コストダウン等のコンサルティングを行う。また、製造業の人材育成にも積極的に取り組んでおり、自律的継続的改善ができる職場づくりなど、サステナブルなものづくりの在り方についての研究・実践を行っている。
共著に『物流改善ケーススタディ65--コストダウン、作業効率を徹底追求--』『続・物流改善ケーススタディ65--コストダウン、作業効率を徹底追求--』(いずれも日刊工業新聞社)、『図解 ビジネス実務辞典 生産管理』(JMAM)、『生産管理のべからず89』(JMAC)