企業によって用途が異なるQC工程表

 QC工程表の使われ方をヒアリングすることで、製造品質の保証活動の実態が垣間見える。以前、A社の製造部門にヒアリングした際に「QC工程表は、品質保証部が顧客に製造工程を説明するためだけに使っています」という回答があった。

 QC工程表は現場で使用していない様子であったため、「それでは製造部門ではどのような文書を使用しているのか」と確認した。その結果、個々の作業標準や検査標準はあったものの、一連の工程の中でどの品質特性をどのように保証しているのか読み取りにくい状況であった。

 一方で、同様のヒアリングにおいてB社では「QC工程表を見ながら作業しています」という回答があった。QC工程表を見ながら作業するというケースは一般的ではないと考えられるため、続けてその内容を確認した。

 すると、名称自体は「QC工程表」で、形式も一般的なQC工程表の形に準じているが、中身は製造工程における工程内検査の検査標準の要素を含めたものであった。B社ではQC工程表は品質保証の核となる文書であることを強く意識し、現場で日々使用することを追求していた。

多様な活用方法があるQC工程表、自社ではどう使う?

 前述のエピソードにあったA社の事例から分かるように、QC工程表の役割の1つは顧客への説明に使用することである。具体的にはBtoBメーカーにおいて、製品の取引開始にあたって製造工程の管理方法を説明し、その管理方法を約束するためにQC工程表の提出が求められることが多くある。

 また、提出が求められない場合でも、顧客による製造工程監査においてQC工程表に基づき製造工程の品質管理の説明を行うことが多くある。A社のように顧客に説明するためだけにQC工程表を作成しているケースは少ないが、製造部門で使用しているQC工程表をベースに顧客説明用のQC工程表を作成することは多くある。

 また、エピソードのB社の事例から分かるように、QC工程表の役割の1つは、製造工程の品質管理方法を標準化し、運用を徹底することである。QC工程表で一連の工程において骨子となる方法を定め、詳細手順を作業標準や検査標準などの標準類を定める。そして現場は、その標準類を基に作業を行うことが多い。B社のように、QC工程表の要素と工程内検査の検査標準の要素を統合することは、現場での運用の効率性を高める工夫の1つと言える。

 以上のように、QC工程表は複数の役割が求められており、その活用方法について迷いが生じることがある。QC工程表の本来の目的を再確認し、自社ではどのように用いるのが正しいと言えるのか、明らかにしておくことが必要である。