中国では、高校と大学の受験シーズンを迎える6月に受験生たちは戦々恐々の毎日を過ごし、7月は卒業・就職のシーズンとなる。高速鉄道の駅で大学の卒業生同士が別れ、それぞれの就職先のある都市に向かう列車に乗り込む光景は夏の風物詩となっている。

 今回は中国における教育と就職の事情を取り上げる。日本企業の採用担当者は人材獲得の際の指針にしてもらいたい。

大学生の希望進路先は10年サイクルで変わってきた

 筆者が中国で受験をしたのは1998年のことだが、中国では1996年までは計画経済時代の“遺産”で大学の学費は無料、卒業すれば国が決めた就職先に行く必要があった。そのため、大学の入学者数は限定されたが、必ずどこかに就職できたという時代だった。これが、1999年以降、高等教育改革により、教育は産業化し始め、学費を有料化した大学は受け入れ枠を拡充、大学入学者が増え続けていった(下の図)。

 そうした大学生の進路だが、筆者が卒業した2002年ごろは、大卒の学生の進路として「海外留学>外資企業>国有企業>大学院>民営企業>公務員試験」という人気の順番が定着していた。とりわけ、2001年の中国のWTO加盟によって外資企業の中国進出が急増したことで、企業側で大卒や外国語人材に対するニーズが高まっていた。

 この頃、ファーウェイやアリババのような民営のテック企業は優秀な人材を採用できないという課題に直面していた。当時、ファーウェイとアリババが今のように発展すると思う人が少なかったからだ。

 だが、2010年代に入りデジタルエコノミーが勃興すると、そうした状況も変わり、外資企業への就職や大学院進学よりもプラットフォーマーや大手テック企業、ネットビジネス関連企業、ベンチャー企業に就職するのがベストな選択となっていく。特に、2015年前後には起業ブームが起こり、入社したベンチャー企業がIPO(新規株式公開)し、20代のうちに経済的自由を手に入れる大卒学生も出てきた。

 ところが、2020年代になると、コロナ禍や経済減速による影響で安定志向が高まり、現在では国有企業や大学院進学、公務員試験が人気の高い選択肢となっている。