激動の1年であった2022年も終わりを迎えようとしている。中国では習近平政権が無事に3期目に入ったが、経済減速が鮮明になっている。一方では、厳しいゼロコロナ対策の緩和や不動産業界への救済といった政策転換も始まっている。「開放」に舵を切り、経済安定・経済発展に軸足を移そうとする姿勢が明らかになった。
拙稿では2022年の中国を振り返った上で、本格的な回復を目指す2023年を展望し、ハイテク、消費関連の動向を中心に説明したい。
コロナ禍に翻弄された2022年
「政治の年」である2022年の中国はコロナ禍に翻弄され、一言で表すとすれば、「低迷」という言葉が最も適切だろう。中国経済の不振を示すマクロデータは多くあるが、筆者は特に消費者信頼感指数の変化に注目している。
同指数は0から200までの範囲で消費者マインドを指数化した指標で、100が楽観と悲観の分岐点である。数値が大きければ大きいほど、消費者が楽観的に考えていることを示す。
1990年のデータ公表からみると、消費者信頼感指数は1990年代の100台から徐々に上昇し、2021年2月では127.0となり、過去最高を記録した(下図参照)。しかしながらコロナの感染拡大による影響で一転。2022年4月からの上海のロックダウンで急落、過去30年間にもない、100を下回る数値にとどまっている。
中国人は「信心(しんしん、他人や物事に対して楽観的にみる意味)は黄金より貴い」とよく言う。そして「信心を失うことが何より危険」との考えがある。消費者信頼感指数の急落は、人々の「信心」が足りないことになる。今後、政策転換と同時に「信心」の回復にも注力すべきだ。
今後の産業発展の方向性
中国の産業政策はこれから、どの分野に傾斜するだろうか。その答えは当然ながら、衰退産業より成長産業になる。中国が考えている成長産業、すなわち産業発展の方向性をみてみたい。
2022年10月の寄稿(第20回中国共産党大会報告からみる「中国の産業発展の行方」)では、中国が現代化産業体系を目指す方針で産業のアップグレードを図り、「製造強国」を目標にしていることを説明した。その実現に向けて、中国は現在、特に2つの分野に力を入れている。
1つは、助成金や税制優遇といった産業政策の支援で「専・精・特・新(専門化・精密化・特徴化・斬新化)」のいずれかの特徴を持つ中小企業の育成である。これらの中小企業は「製造強国」の基盤となるからだ。中でも、コア技術を持つ、あるいはニッチ分野で高い市場シェアを占める「小巨人(隠れたチャンピオン)」を現在の約4700社から1万社に育てようとしている。
もう1つは、「硬科技(ハード&コアテクノロジー)」というホットワードである。これについては2022年8月の寄稿(キーワードは「硬科技」、中国が目指すイノベーションの方向が変わった!)で説明したが、米中テック対立でその重要性がますます高まっている。そしてテック企業やプラットフォーマーも、ユーザー争奪戦より、「硬科技」に注力するようになっている。