10月1日の国慶節から中国は「喜迎二十大(第20回党大会を喜んで迎える)」という祝賀モードに入り、各種メディアは過去10年間の発展の成果を大いに報道するようになっている。こうした中、第20回中国共産党大会が16日に北京で開幕し、初日では習近平国家主席が活動報告を行った。
中国の政治経済や今後の動向について、しばらくはメディアや専門家による解読があふれるだろうが、拙稿では報告書の内容の変化をもとに産業分野に特化した情報をいち早く読者の皆さまと共有したい。
党大会活動報告のメッセージはどう変わった?
2012年と2017年の党大会より今回は報告時間が短かったものの、内容が増えた。13章で構成された前回の報告書と比べると、今回は全15章である。1章と2章はこれまでの総括で、3章は長期目標である「中国式現代化で社会主義現代化強国を目指す」ことを明確にし、4章から15章までは具体的な施策という構成である。
言うまでもなく、各章のタイトル自体は重要なメッセージである。前回からの変化を中心にみると、前回の4章に当たる「小康社会(ややゆとりのある社会)」の目標が達成されたため、この部分が削除された。その代わりに、第5章(「新発展の構成の構築を加速し、質の高い発展を推進」)、7章(「法治による国家建設を堅持し、『法治中国』を推進」)と12章(「国家安全体系と能力の現代化を推進し、国家安全の確保と社会安定の維持」)が新しく追加された。中国が新たな局面を迎える「新時代」という表現も頻出した。
質の高い発展を意識し、現代化産業体系で目指すもの
産業分野に関して、まず過去10年間の実績として、「次世代情報技術をはじめとする戦略性新興産業の発展が拡大し、有人宇宙船や深海探査、スーパーコンピューター、衛星GPS、量子情報、核電力技術、航空機、バイオ製薬などにおいて重要な成果を取得」とし、「中国は既にイノベーション型国家になった」と宣言した。
イノベーション型国家とは中国が2006年に打ち出した、2020年に実現したい目標である。GDPに占めるR&D支出が2.5%以上、学術論文や特許登録の件数が世界5位以内などの数値目標と、イノベーション能力を評価する定性目標が定められている。実際、2020年のR&D支出/GDPの割合は2.41%であり、2.5%以上とはならなかったものの、その他の指標などによる総合判断での宣言だったといえる。
今後の産業発展に関する記述は4章「新発展の構成の構築を加速し、質の高い発展を推進」に集中している。方針は「現代化産業体系を構築し、経済発展の着眼点は実体経済に置く」ことだ。最大の目標は産業構造のアップグレードであり、その実現のために、「新型工業化を推進し、製造強国、品質強国、宇宙强国、交通強国、インターネット強国、デジタル中国の建設を加速」と明言した。中でも「製造強国」は肝心な部分であるが、「中国製造2025」(次の表)の延長線上にある目標と言ってもよいだろう。