変革は最初の一歩を踏み出さなければ生まれない。ただし、変革のために何かをするにしても、有効な方法論に基づいた活動であるかどうかで、結果は違ってくる。旭化成は、デジタルトランスフォーメーション(DX)促進の方法論に基づいた「Asahi Kasei Garage」と呼ぶイノベーション創出やDXのための活動を2020年代以降、実践している。デザイン思考やアジャイル開発を重視した活動であり、成果が出始めている。導入普及のキーパーソンは「共に」という言葉をくりかえした。

変革へ、方法論をベースにした活動がスタート

 企業は課題解決や変革のため「方法論」を構築し、駆使する。効果がある、またはそう評価されている方法論をもとに取り組めば、闇雲に取り組むより成果を得られる確度は高まる。それに、多くの従業員がいる企業では方法論が共通言語の役割を果たすことにもなる。

 デジタル変革を果たそうとしている旭化成は、2020年以降、IBMのデジタル変革モデルを社内に導入し、その方法論をもとにした変革のための活動をおこなっている。その活動を「Asahi Kasei Garage」(以下、Garage)とよんでいる。

活動推進部署が発足、成果が上がり始める

「私たちのGarageが何かといわれればデジタルを主とする変革の活動の一つです。そのコンセプトのもとにあるのが、IBMがサービス提供している『IBM Garage』という変革アプローチです」

 こう話すのは、旭化成のデジタル共創本部に所属し、「共創戦略推進部長」の肩書をもつ奈木野豪秀氏だ。同社入社後、音声関連の技術開発やソリューションビジネスを担当してきた。その後、同社のクリーンエネルギープロジェクトにて、水素製造技術をデジタル技術で「モノ売り」から「コト売り」に変革すべく、日本や欧州でキャリアを積んだ。

旭化成 デジタル共創本部 DX経営推進センター 共創戦略推進部 部長 奈木野豪秀氏(撮影:酒井俊春)

 欧州から帰国したのは2020年夏。第1回で登場した旭化成DXの「指揮者」久世和資氏が、日本IBMから旭化成に着任した直後だ。奈木野氏はその後のGarage導入までの経緯をこう話す。