父が役者を廃業。大河ドラマも超歌舞伎も見事な中村獅童

 やはり知名度の高い中村獅童(50歳)も、スムーズな道を歩んできたわけではない。代々歌舞伎役者を輩出している萬屋に生まれるが、父は早くに歌舞伎役者を廃業。やはり、いい役がつかない10代を過ごしている。外部のオーディションに挑戦し続けた末に、2002年映画『ピンポン』の準主役で各種新人賞5冠を受賞したところから知られ始め、たくさんのドラマや映画に出演するようになる。

「歌舞伎の世界では、18代目中村勘三郎(2012年没)に見いだされて、いい役がつくようになっていきました。自分の存在を認めさせてのし上がってきたのは、やっぱり偉い。2022年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の十三人』の梶原景時。ああいうものに出てくると本当に上手いですよね」

 獅童が続けてきたもののひとつが超歌舞伎。バーチャルシンガーの初音ミクたちと獅童ら歌舞伎役者が、歌舞伎と最新のテクノロジーを融合させた舞台で繰り広げるエンターテインメントだ。2016年から幕張メッセでの上演がネット上に生中継され、京都南座などでも上演され、2023年12月には歌舞伎座での上演も決まっている。

「超歌舞伎は、獅童にしかできないでしょう。突然、古典歌舞伎のかっこうをして出てきて、歌舞伎に何の興味もない何千人の若者をあおれる役者はなかなかいません。

 絵本を歌舞伎化した『あらしのよるに』でも、心優しい狼という、ぴったりの役をつかみました。『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーⅩ』(2023年春)でも、抜群に上手かったですね。どうなるかわからない現代ものに対して、多くの役者は半歩の躊躇があります。そこを獅童は軽々と越えていって、いきいきと呼吸している。才能と自信を持ち合わせているのだと思います」

 歌舞伎座の八月納涼歌舞伎では『次郎長外伝 裸道中』と『新門辰五郎』に出演する。