20代の若さで主役に抜擢。注目される中村隼人

 歌舞伎やドラマの主役にも抜擢されて成長著しい中村隼人(29歳)は、2代目中村錦之助を父に持つ。

「中村獅童や中村隼人を“御曹司でない”という中に入れたら、それは違う! という人も多いでしょうが」と断りながら、児玉さんは中村隼人も注目の若手であると言う。

「ビジュアル先行ではあるけれど、多くの役を与えてもらって、場数を踏んで自信をつけ、技量があがってきました。顔かたちがいいのは、誰もが認めるわけで、あれを生かさない手はありません。

 ただし、現代的なかっこいいということと、歌舞伎の舞台で映えるということは、簡単にイコールではない。隼人は、身長177センチで小顔、ちょっと脚が長すぎて、舞台ではかえって決まりにくかったりもします。評価を上げたのはスーパー歌舞伎や『ワンピース』で、そこからいろいろな可能性をつかんでいきました。あの良さを古典歌舞伎の中にどう生かしていくのかでしょう。外部出演では今のところ、一番の当たり役と言えるのはテレビの『大富豪同心』かもしれませんね」

 BS時代劇『大富豪同心』は2019年にNHKで放映されたドラマで、2021年に『大富豪同心2』、現在は『大富豪同心3』がオンエア中。隼人は、主人公のちょっとぽーっとしたお坊ちゃまの同心役を演じている。

「見た目はすごくいいんだけど頼りない、でもまわりが何とかしてくれる。あれはどんぴしゃり」

 歌舞伎座の八月納涼歌舞伎では『新・水滸伝』で主役をつとめ、宙乗りも披露する。

 今後は、古典歌舞伎の中で、当たり役を作っていってほしいと児玉さんは言う。

「他の若手もそうですが、さらにスターになっていくには、他の役者には真似できない“これ”という当たり役を持たないといけないわけです」