* 本コンテンツは以下講演の【講演動画】と【全文採録記事】で構成しています *
第5回 ファイナンス・イノベーション
特別講演3「これからの企業経営に求められるESG・SDGs経営とインパクト加重会計」

開催日:2023年2月21日(火)
主催:JBpress/Japan Innovation Review

 サステナビリティについての社会的な関心が高まる中、企業経営においても、ESG・SDGs経営が大きな課題となっています。多摩大学社会的投資研究所教授の堀内勉氏は、ESG・SDGs経営は「環境・社会・経済」問題に配慮すると同時にその課題を解決して企業の長期的な持続可能性を高める経営であるとした上で、その本質は「社会の一構成員として、企業が自然人と同じような倫理や道徳を身に付けて『社会的な存在』になること」であると語ります。

 堀内氏は、現在のファイナンスの大きな枠組みとして、営利法人が企業価値の最大化を目指す「コーポレートファイナンス」と非営利法人が社会的な価値の実現を目指す「ソーシャルファイナンス」の2つが存在しており、昨今のESG・SDGsの浸透により、両者が歩み寄り“重なり合う領域”が拡大していると指摘します。

 また、ESG・SDGsなどとともに注目が高まっている「インパクト」にも注目。「インパクト投資」は財務的リターンに加えてポジティブで測定可能な社会的・環境的インパクトを同時に生み出すことを意図するプロアクティブな投資であり、「インパクト加重会計」は企業が社会や環境にもたらすインパクトを金銭価値に換算して財務諸表に組み込む会計手法であると語り、これらの用語の定義と意義を確認していきます。

 このようなESG・SDGs、インパクトといった考え方が登場した背景には、マーケットのどだいとなる資本主義をめぐるさまざまな問題意識があります。堀内氏は、「そもそも資本主義とは何か」「人間を幸せにしているのか」といった根源的な問いに立ち返ることで、資本主義の本質と課題を考察。資本主義が国家や社会、私たち全てを飲み込む“資本主義の全体化”が進んでいる現状を指摘しつつ、このような時代に企業が再び人間性を取り戻すためにはどうあるべきか、企業倫理の観点から解説していきます。

 現在、政府においても「新しい資本主義」の実現が目指される中、金銭的価値だけではなく社会によいインパクトを与えた企業が評価され、そこに資金が集められるというインパクトエコノミーへの期待が高まってきています。金銭的価値に偏重していた経済社会を変革し得るESG・SDGs経営とインパクト加重会計について、思想的背景をたどりながら堀内氏が解説します。

【TOPICS】

  • ESG・SDGsの社会への浸透
  • ソーシャルファイナンスとコーポレートファイナンスの関係性
  • 注目が高まる「インパクト投資」と「インパクト加重会計」とは何か
  • 資本主義をめぐる諸問題とは
  • 資本主義の拡張と全体化(世界化)
  • 企業に倫理はあるのか?経営における倫理の問題
  • サステナビリティ経営とトリプルボトムラインの考え方
  • インパクトエコノミーと“新しい資本主義”