* 本コンテンツは以下講演の【講演動画】と【全文採録記事】で構成しています *
第2回 取締役イノベーション
特別講演2「企業価値向上のための経営指標~EV-KPIペンタゴンモデル5つのカテゴリーにわたる経営指標を具体化する~」

開催日:2023年2月17日(金)
主催:JBpress/Japan Innovation Review

 企業をめぐる環境が目まぐるしく変わる昨今、企業には自社の経営戦略に基づく最適な経営指標を選別し、社内外に対して適切に開示することが求められています。こうした中、独自の「EV-KPIペンタゴンモデル」を提唱し、企業価値を創造するための重要な経営指標を5つのカテゴリーで整理しているのが、オオツ・インターナショナル代表取締役であり、BBT大学大学院客員教授および慶應義塾大学非常勤講師を務める大津広一氏です。

 講演の冒頭にて大津氏は、経済価値と社会価値が企業価値向上を生み出すとした上で、「企業価値」とは将来FCF(フリーキャッシュフロー)を資本コスト(WACC)で割り引いた現在価値であると解説。企業価値向上のためには、FCFを高め、資本コストを下げることが必要であると語ります。そして「FCFと資本コストの2つをどのように中長期的に作り出すか」まで踏み込む必要があるとし、それを具体的に語る役割を果たすのがKPIであるといいます。

 このようなKPIの重要性を踏まえ、株主に分かりやすい情報発信を行い、企業価値を創造するために伝えるべき指標をまとめたものが、大津氏による「EV-KPI(Enterprise Value Key Performance Indicators)ペンタゴンモデル」です。「成長」「収益力」「キャッシュフロー」「投資収益率」「資本政策」の5つの要素でKIPを整理した「EV-KPIペンタゴンモデル」に基づき、各要素に属した具体的な指標を開示することで、企業の方向性を適切に伝えられることができると大津氏は語ります。

 経営指標の中でも、近年特に注目されているROIC(投下資本利益率)については、企業価値算定式の全てのコンポーネントを網羅した指標であり、WACCと比べて単年度ベースで評価できるのが優れている点であると解説。その一方で、算出単位はどう定義するのかといった問題などROICには数多くの論点があり、トライアンドエラーも大事になるといいます。

 本講演の後半では、ケーススタディとして、複数の事例を紹介しています。日立製作所、セブン&アイ・ホールディングス、ニトリホールディングスの事例を通じて「EV-KPIペンタゴンモデル」を考え、また神戸製鋼所、日立製作所によるROICの開示に学ぶことで、適切な情報開示のあり方について理解を深めていきます。

 企業価値向上のための具体的な経営指標を示す「EV-KPIペンタゴンモデル」の活用により、中期経営計画、長期ビジョンを今後どのように設定していくべきか。示唆に富んだ必見の内容です。

【TOPICS】

  • 経済価値と社会価値が生み出す「企業価値の向上」
  • 「企業価値」とは、将来FCFを資本コスト(WACC)で割り引いた「現在価値」
  • FCFを高めWACCを下げる、経営指標に置き換えた「企業価値の向上」とは?
  • コーポレートガバナンス・コードに明記された、資本コスト重視の経営
  • 企業価値を創造する「EV-KPIペンタゴンモデル」5つの要素と経営指標
  • 「EV-KPIペンタゴンモデル」のケーススタディ(日立製作所/セブン&アイ・ホールディングス/ニトリホールディングス)
  • 企業価値算定式の全てのコンポーネントを網羅した指標、ROIC
  • ROICを活用している会社のケーススタディ(神戸製鋼所/日立製作所)
  • 「EV-KPIペンタゴンモデル」のベストプラクティス、米国3Mの事例