スマートショッピングカートやAIカメラなど、IoT機器の登場でショッピングシーンは変革期を迎えている。そうした小売業界にあって「店舗の効率化」と「顧客の買い物体験の向上」を提唱し、自社開発のスマートショッピングカートの導入実績159店舗・約1万5000台(2023年4月現在)という実績を誇るRetail AIグループは、どのような未来を見据えるのか。Retail AI代表取締役CEO永田洋幸氏が、同社のスマート・ストア・テクノロジーの全貌と戦略について語る。

※本コンテンツは、2022年11月29日に開催されたJBpress主催/JDIR「第10回リテールDXフォーラム 世界と日本の先進事例に学ぶ! 小売業におけるデジタル戦略とサステナビリティ経営の最前線」の特別講演1「SMART STORE TECHNOLOGY~自社開発のIoTを活用したRetail DX~」の内容を採録したものです。

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スマート・ストア・テクノロジーを推進するRetail AIの3つの戦略

 Retail AIは、福岡市に本社を置くディスカウントショップなどを展開するトライアルホールディングスが2018年に設立した、店舗DXの技術を開発する企業である 。現在、スマートショッピングカートは159店舗に約15,000台。AIカメラは64店舗に約3800台、デジタルサイネージは78店舗に約1,900台が導入されている。(2023年4月現在)

 スマート・ストア・テクノロジーとは、例えばこれまでは捉えることができなかったオフラインのデータの流れを把握し、リアルタイムで消費者の声に素早く反応して、個別の最適化を図ることを可能にする技術だ。またサプライチェーンを劇的に効率化し、食品廃棄物削減、物流コスト低減を実現する。さらに店舗では、AIが棚にある商品を追跡することで、万引きの可能性を知らせたり、タイミングよく商品を補充したりすることが可能だ。また顧客はスマートカートを用いて、入店から出口に至るまでシームレスな買い物体験ができる。

 Retail AI代表取締役CEOであり、トライアルホールディングスの取締役を兼任する永田洋幸氏は、講演を始めるに当たり、自身が直近の渡米時に『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』の著者であるスコット・ギャロウェイ氏との対話を通じて実感したという事柄について語った。それは、「テクノロジーが進む中で、市場に過大評価されるもの、過小評価されるものが出てきているのではないか」ということだ。例えば、メタバースは過大に評価される一方で、実際の市場がどこまであるかは不明だ。 永田氏はギャロウェイ氏の考えに賛同し、「DXでは話題性に踊らされず、お客さまニーズにフィットしたものをつくっていかなければなりません」と語る。

 そのうえで、Retail AIのDXにおける戦略として挙げるのが、ストレスフリーな顧客体験を提供するシステム開発の「Frictionless(フリクションレス)」、システムから収集したデータを統合する環境の「Unified data(ユニファイドデータ)」、そしてデータを分析し、小売企業の収益向上を目指す「Data monetization(データマネタイゼーション)」である。