ただし、今回の異議告知書ではこのアプリ決済システムに関する見解を取り下げた。欧州委は声明で、「もはや(アプリ決済の)合法性に関する立場は取らない。今回の異議告知書は、21年の異議表明に取って代わる」とし、調査対象を1つに絞る意向を示した。欧州委はその理由について明らかにしていない。

 これを受け、アップルは「欧州委が対象を1つに絞り込んだことを喜んでおり、その懸念を理解し対応するために引き続き協力する」と述べた。米ウォール・ストリート・ジャーナルは、アップルが「当社のアプリストアはスポティファイが音楽配信サービス市場で世界首位になる手助けをした。欧州委が根拠のない疑いの追求を終えることを願っている」とも述べたと報じている

アップル、つかの間の勝利か

 一方、ロイター通信は、今回のアップルに対する追及の規模縮小は、同社にとって勝利だが、それはつかの間の勝利かもしれないと報じている

 EUは22年11月にデジタル市場法(DMA)を発効した。米ブルームバーグなどによると、今後数カ月後に一部規則の適用が始まり、24年に全規則の順守が義務化される。同法は、アップルのほか、米アマゾン・ドット・コムや米グーグル、米メタなどの市場支配力に制限をかけ、競争阻害行為の抑止を狙っている。

 その基準は、時価総額が750億ユーロ(約10兆8500億円)以上か、EU域内の年間売上高が75億ユーロ(約1兆850億円)以上の巨大IT(情報技術)企業。月間利用者数が4500万人以上、年間企業利用件数が1万件以上のIT企業も対象になる。EUはこれらを「ゲートキーパー(門番)」に指定し、規則を順守させる。

 ゲートキーパー企業は、自社製品や自社サービスを、プラットフォームに参加する他社の製品/サービスよりも優遇することを禁じられる。違反すれば、世界年間売上高の最大10%の制裁金を科される可能性がある。違反が繰り返される場合は上限が20%に引き上げられ、企業買収(M&A)が禁じられるなど他の罰則が科される可能性もある。