米アマゾン・ドット・コムのアンディ・ジャシーCEO(最高経営責任者)が、苦戦中の実店舗事業を強化することを誓ったと、英フィナンシャル・タイムズやロイター通信が2月13日報じた。
「事業環境は正常な状態ではなかった」
フィナンシャル・タイムズとのインタビューでジャシー氏は、実店舗事業を大きく広げる準備ができていると述べ、同事業における一連のつまずきについて、新型コロナ禍で「日常」が失われたためだと説明した。
「(当社の)多くの店舗が、コロナ禍の真っただ中にオープンしたことを思い出してほしい。つまり、私たちの事業環境は多くの点で正常な状態ではなかった。私たちは立地やレジ方式、品ぞろえ、価格帯について実験を進めている。有望だと思われるものがいくつかあり、励まされている」(ジャシー氏)
アマゾンは2022年に、米国と英国で数十店の小売店を閉鎖した。対象となったのは、対面式の書店「Amazon Books(アマゾン・ブックス)」や、ネット通販で評価の高い商品を集めた「Amazon 4-star(アマゾン・4スター)」、ショッピングモール内の小規模店舗「Amazon Pop Up(アマゾン・ポップアップ)」だ。
これにより、傘下のスーパーマーケットチェーン「Whole Foods Market(ホールフーズ・マーケット)」や、直営スーパー「Amazon Fresh(アマゾン・フレッシュ)」、レジなし精算のコンビニエンスストア「Amazon Go(アマゾン・ゴー)」などに経営資源を集中させた。
コロナ禍で拡大計画撤回
Whole Foods Marketを137億ドル(約1兆8100億円)と、アマゾン史上最大の金額で買収してから5年がたつが、同社はまだ、1兆6000億ドル(約211兆円)規模の米食品・日用品市場で、競合に恐れられていたような変化を起こしていないと、フィナンシャル・タイムズは報じている。
同社は、200店舗以上のAmazon Freshを出店する予定だったが、この拡大計画を撤回し、一部店舗の閉鎖と新規出店の停止を決めた。これより、Amazon Freshの店舗数は現在、約60店(米国と英国)にとどまっている。オープン予定だった店舗の一部は今も空のままだという。
アマゾン実店舗収益、全体のわずか3.3%
実店舗計画の縮小に伴い、22年10~12月期に7億2000万ドル(約950億円)の減損費用を計上した。同四半期の営業利益は27億3700万ドル(約3600億円)で、前年同期から21%(7億2300万ドル)減少した。
同社の実店舗事業はまだ規模が小さい。同四半期の実店舗売上高は49億5700万ドル(約6500億円)で、同社全売上高の3.3%にすぎない。Whole Foods Market買収以降、アマゾンの実店舗事業の収益は10%程度しか増えていない(米ビジネス・インサイダーのグラフ)。
アマゾン直営の実店舗は、前述したAmazon Goと、22年にオープンした衣料品販売の「Amazon Style(アマゾン・スタイル)」もある。Amazon Goは現在米4都市で28店舗が営業中だ。Amazon Styleは米カリフォルニア州と米オハイオ州の計2店舗が営業している。
(参考・関連記事)「アマゾン、リアル店舗戦略見直し、書店など68店閉鎖 | JDIR」