パンデミック特需一服で成長減速

 米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、マイクロソフトは新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)下で急成長したクラウドサービス企業の1社。この期間に同部門の売上高は数四半期連続で前年実績を50%超上回った。同社は米アマゾン・ドット・コムに次ぐ世界第2位のクラウドコンピューティングプラットフォーム企業。同部門は依然としてマイクロソフトの主力成長エンジンであるものの、最近は顧客が支出を抑えており、成長が減速している。

 テクノロジー大手は、パンデミック時の需要増に対応するため雇用や投資を加速させてきた。だがそうした特需が一服すると、成長鈍化に見舞われ、各社は人員削減などの策を取るようになった。

 マイクロソフトの収益源は法人顧客が大半を占めるため、これまで景気減速の影響を免れてきた。しかし、今や同社もその影響を避けられない状況になってきた。加えて、金利上昇という逆風も吹く。

PC向け事業19%減、企業など買い控えに転じる

 パソコン基本ソフト(OS)の「ウィンドウズ」などを含む「モア・パーソナルコン・ピューティング」部門の22年10~12月期の売上高は、142億ドルで、前年同期から19%減少した。パソコンメーカー向けウィンドウズのライセンス収入は同39%減と、大幅に落ち込んだ。コロナ禍でパソコンを買い替えた企業や政府機関、消費者が買い控えに転じており、同部門の業績不振が続いている。パソコンメーカー向けウィンドウズのライセンス収入は22年7~9月も前年同期比15%減と、2桁減少していた。

 モア・パーソナルコン・ピューティング部門の売上高は全体の3割弱であり、その影響は他の部門に比べて小さい。ウォール・ストリート・ジャーナルの別の記事によれば、マイクロソフトはウィンドウズに依存していた時代から大きく変化した。だが同OSは今も収益性の高いビジネスであり、パソコン市場の不振は同社の業績に大きな影響を及ぼす。

 そして、それはすでに現実だ。米調査会社のガートナーによると、22年10~12月期の世界パソコン出荷台数は、前年同期と比べて28.5%減少した。これはガートナーが統計を取り始めた1990年代半ば以降最大の減少幅。パソコン市場は、22年に急激な需要減を経験したが、しばらくこの状態が続きそうだ。ガートナーは24年になるまで市場が完全に回復することはないとみている。