しかし、フィナンシャル・タイムズによると、インドではここ数年、規制が緩和された。アップルは20年9月に同社としてインド初の直営オンラインストアを開設した。加えて、同社は近年、電子機器受託製造サービス(EMS)大手との協力でインド生産を拡大している。17年には、台湾のEMS大手、緯創資通(ウィストロン)と提携し、インドでiPhoneの型落ちモデルの組み立て業務を開始した。20年には同じく台湾EMS大手の鴻海(ホンハイ)精密工業が当時の現行モデルを手がけ、インド生産を本格化させた。

 また、緯創資通や鴻海、台湾EMS和碩聯合科技(ペガトロン)は、「PLI(プロダクション・リンクト・インセンティブ)」と呼ぶインド政府の補助金制度を活用し、製造拠点への投資を拡大した。フィナンシャル・タイムズによると、アップルはこうして現地生産を増やすことで完成品の輸入時にかかる関税を抑え、販売を伸ばした。

 ブルームバーグ通信は22年9月初旬、インドの大手財閥タタ・グループと緯創資通が、同国でiPhoneを組み立てる合弁会社の設立に向けて協議中だと報じた。タタが緯創資通のインド事業に出資する、2社が共同でiPhoneの組み立て工場を建設する、あるいはその両方を実施する可能性があるという。

 フィナンシャル・タイムズによると、タタは現在インド南部のタミルナドゥ州でiPhoneの筐体(きょうたい)を製造している。同社は今後幅広い部品をアップルに提供するため、事業を拡大する計画だと関係者は話している。

iPhone販売効果、MacやApple Watchに波及

 香港のカウンターポイント・リサーチによると、インドでは22年に約20億台のスマホが生産された。これは14年の生産台数の約10倍。インドにおけるiPhoneの市場シェアは5%程度と低いものの、急速にシェアを伸ばしており、iPhoneは高価格帯端末市場で約4割のシェアを持つ。

 新型コロナの感染拡大以降、インドで販売されたiPhoneの台数は2倍に増えた。これがパソコン「Mac」や腕時計端末「Apple Watch」、タブレット端末「iPad」の売り上げを押し上げており、好循環が続いている。 アップルは急速に成長する市場に注目しており、今が投資を拡大するのに最適な時期だとカウンターポイントのアナリストであるニール・シャー氏は指摘する。

 シャー氏によると、アップルは今後インドで4つの店舗戦略を推し進める可能性がある。1つはオンラインストアの強化。2つ目は、富裕層が多い都市(2都市以上)での直営店出店。3つ目はタタとの提携により、ティア1(インドの都市の区分。人口などいくつかの条件がある)都市や次のティア2の各都市で10店舗以上を出店すること。4つ目は地場の大型小売チェーンと提携し、比較的小さな「店舗内の店舗」を出店することだという。