中国における新型コロナウイルスの感染拡大によって米アップルのビジネスが脅威にさらされていると、英フィナンシャル・タイムズが12月25日に報じた。主力製品である「iPhone」の生産が数カ月にわたり中断されるリスクが高まっていると専門家は指摘している。
工場や物流、輸送で人手不足に
アップルからiPhoneの製造を請け負う台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の中国・鄭州工場(河南省鄭州市)では、2022年10月下旬に新型コロナの感染者が確認され、工場と宿舎内に隔離されていた従業員らが集団で脱出する騒動が起きた。
鴻海は人員補充のために新たな従業員を雇ったが、22年11月22~23日にはこれらの新人工員が手当や衛生環境の不備などを巡り大規模な抗議行動を起こした。鴻海は事態に対応するため、生産の一部を中国各地にある別の工場に移した。アップルは部品メーカーと協力して、供給制約の解消を図った。
しかし、中国政府が感染対策を緩和した後、各地で感染が急拡大しており、今後はより長期にわたるリスクが迫っている。中国全土の部品工場や組み立て工場で人手不足が深刻化する可能性があるという。
電子部品のサプライチェーン(供給網)に詳しい専門家は「工場だけでなく、倉庫や流通、物流、輸送施設でも多くの業務が欠勤の影響を受けるだろう」と指摘する。
香港のカウンターポイント・リサーチによれば、鴻海の鄭州工場は、最新機種「iPhone 14」の普及モデル(14/14 Plus)の80%超の製造を、上位モデル(14 Pro/14 Pro Max)の85%の製造を担う。
アップルは22年11月初旬に声明を出し、「鄭州の主要な14 Pro/Pro Maxの組立施設は生産能力を大幅に縮小して操業しており、顧客の手元に届くまでの待ち時間が長くなることが予想される」と説明した。米家電量販大手ベストバイは22年11月22日、年末商戦の店頭では14 Proと14 Pro Maxが品薄になるとの見通しを示した。