文=酒井政人

2022年1月2日、第98回箱根駅伝、1区を走る吉居大和(中央大) 写真=松尾/アフロスポーツ/日本スポーツプレス協会

ダークホースは5校

 3冠を狙う駒大と連覇を目指す青学大。戦力的には両校が抜けているが、ミスがあると〝優勝ライン〟は下がっていく。前回5位の東京国際大、出雲駅伝で3位に食い込んだ中大。それから全日本大学駅伝でトップ5に入った國學院大、順大、創価大の5校には2強を崩すポテンシャルが十分にある。

 では、どのような戦略が有効なのか。ダークホース校の〝突破方法〟を探っていきたい。

 

どこで〝ジョーカー〟を切るのか

 まず序盤区間にインパクトを与えることができるのが中大だ。前回は吉居大和(3年)が1区を独走。最古となっていた区間記録を15年ぶりに塗り替えて、後続に39秒以上の大差をつけた。他校の指揮官は吉居が入る区間に戦々恐々としている。それを藤原正和駅伝監督も十分に理解しており、吉居を1~3区のどこに配置するのか。ライバル校の動向に目を光らせながら最終決定していく考えだ。

 前回は2区で11位まで転落したが、今回は10000m(28分00秒86)の中大記録保持者で上りも強い中野翔太(3年)が2区の候補に挙がる。前回よりは粘ることができるだろう。出雲と全日本を好走した千守倫央(4年)、10000mでU20日本歴代4位の28分06秒27をマークした吉居駿恭(1年)も往路の候補。5区には前回6位の阿部陽樹(2年)、6区には前回5位の若林陽大(4年)が控えており、山で2強に急接近できるチャンスがありそうだ。復路候補にも前回8区3位の中澤雄大(4年)、同9区3位の湯浅仁(3年)、関東インカレのハーフ3位の山平怜生(2年)ら充実メンバーが揃っている。

 2強にプレッシャーを与えることを考えると、吉居大和は1区起用が有効になるだろう。2区では持ち味を生かすのが難しく、3区ではトップ争いまで届かない可能性があるからだ。今季は出雲1区でも序盤から抜け出すことに成功しており、吉居の爆発力はずば抜けている。エースが超高速レースに持ち込むことで、優勝を狙う1区の走者にプレッシャーをかけることができる。それが大きなミスにつながるかもしれない。

2022年1月2日、第98回箱根駅伝、2区を走る三浦龍司(順天堂大) 写真=アフロ

 前回準優勝の順大は東京五輪3000m障害で7位入賞の快挙を成し遂げた三浦龍司(3年)の区間がポイントになる。前回は2区を務めて、区間11位。チームの役割を果たしたが、1区平駿介(4年)が18位と出遅れたこともあり、快走したイメージはなかった。

 前回は3区伊豫田達弥(4年)が区間3位、4区石井一希(3年)が同2位、5区四釜峻佑(4年)が同5位。伊豫田と石井は2年連続で同じ区間を出走しており、5区四釜はオーバーペースになったことを悔やんでいた。この3区間は攻撃ポイントとして計算できるだけに、動かさない方がいいだろう。6区候補の服部壮馬(2年)は期待値が大きく、全日本6区で区間新の快走を見せた主将・西澤侑真(4年)も復路の重要区間で活躍が見込まれる。

 消去法で考えると三浦の区間は1区か2区になる。仕上がり次第にはなるが、花の2区は前々回務めた野村優作(4年)に託して、エースは1区で勝負した方がいいのではないだろうか。中大・吉居大和が来ても、ふたりで抜け出すような展開に持ち込むことができる。吉居が他の区間にまわれば、圧倒的なスパートでトップ中継できる可能性は高い。いずれにしても三浦は2区ではなく1区に入る方がライバル校は脅威に感じるはずだ。