文=酒井政人

2022年10月15日、第99回箱根駅伝予選会、55年ぶりの本大会切符を手にし選手たちに胴上げされる立大・上野裕一郎監督(中央) 写真=日刊スポーツ/アフロ

専修大の木村が日本人1位

 10月15日に行われた第99回箱根駅伝予選会。「10枚」のチケットをめぐる戦いは今年もドラマチックだった。

 過去最多15人の留学生が参戦したレースに東海大・石原翔太郎(3年)が切り込んだ。市街地に出ると、日本人集団を飛び出してケニア人選手を猛追する。10㎞地点で後続の集団に8秒差をつけた。しかし、ほどなくして顔を歪ませると、14.3㎞付近で後続集団に吸収された。

 日本人トップ争いは17㎞付近で木村暁仁(専大3)が抜け出した。そして、そのまま突っ走る。個人8位の1時間2分32秒でゴールに飛び込んだ。木村は名門・佐久長聖高出身。5日前に行われた出雲駅伝で優勝テープを切った元チームメイトの駒大・鈴木芽吹(3年)から「テレビで応援してるよ」というメッセージをもらったという。「彼はフィニッシュするときに泣いていたので、自分は絶対に笑ってフィニッシュしようと思いました」と狙い通りの快走だった。

日本人トップでゴールしガッツポーズする木村暁仁(専大) 写真=日刊スポーツ/アフロ

 一方、留学生を追いかけた石原は終盤にペースダウンした。「急に(ペースを)上げ過ぎたのかなという感じがしましたし、今日は蒸し暑かったので、脱水症状になったのかもしれません」と東海大・両角速駅伝監督。ゴール後は緊急搬送されるほど消耗していたが、石原は個人47位(1時間3分57秒)と踏ん張った。

 エース藤本珠輝(4年)を欠き、大学関係者が「過去最大の危機」と不安視していた日体大は名門の意地を見せた。「普段の練習から競争するのではなく、全員がこぼれずにやりきる指導をしてきました」(玉城良二監督)と徹底した集団走を展開する。10番目の走者は43チームのなかで最初にゴールへ到達。総合5位で突破して、来春、三四半世紀(75年)の伝統をつなぐことになる。

 

残り「2校」の切符を手にしたのは?

 生き残りに成功したチームがあれば、時代の波に飲み込まれた大学もある。折り返しのある17.4㎞地点で、9位と12位は1分21秒差。神奈川大、専大、中央学大、国士大の4校が、残り「2枚」の切符を争うかたちになった。

 このなかで圏外に弾きだされたのが6月の全日本大学駅伝関東学連推薦校選考会をトップ通過した神奈川大と同7位通過の中央学大だった。

 神奈川大は巻田理空、高橋銀河(ともに3年)という主力がエントリーで外れると、エース格の山崎諒介(4年)も当日欠場。チームは2つのグループにわけて集団走を実施したが、流れに乗り切れなかった。

「7月下旬にコロナが出たりして、夏から歯車がかみ合わなかった。不安があったんですけど、それが的中した感じですね。主力メンバーが欠ければ、うちは選手層が厚くないので難しかったですよ」(大後栄治監督)

 神奈川大の最終結果は総合11位。34秒差で13年連続出場を逃した。通過濃厚と見られていた中央学大も12位に沈んだ。「落ちると思っていなかったですね。すべてが誤算でした」と川崎勇二監督は放心状態だった。