(写真:ロイター/アフロ)

 米アップルが欧州連合(EU)の新しい競争法を順守することで、同社のスマートフォン「iPhone」で利用できる競合他社製のアプリストアが急増する可能性がある。ロイター通信米ウォール・ストリート・ジャーナルが12月16日に報じた。

専門家「他社アプリストアが雪崩を打って流入」

 ロイターによると、英調査会社CCSインサイトのベン・ウッドCMO(最高マーケティング責任者)は、「近い将来、さまざまなアプリストアが雪崩を打って(iPhoneに)流入してくる」と予想している。「『有志連合』は生まれつつある。彼らにはアップルへの税金とみなしている決済手数料を支払わなくても済むという共通の利益がある」(同氏)。

 アップルが、アプリを正規ストアの「App Store」以外からインストールする「サイドローディング」を容認すれば、大手ゲーム配信企業にとってゲームに特化したアプリストアを立ち上げる道が開かれると、ウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。例えば、米マイクロソフトはモバイルゲームストアの立ち上げに強い意欲を示しているという。同社のゲーム部門責任者は2022年10月、アップルと米グーグルによる独占を解消したいと述べたという。

 これに先立つ22年12月13日、ブルームバーグ通信は、アップルがEU域内で施行されるデジタル市場法(DMA)を順守するため、iPhoneとタブレット端末「iPad」で他社のアプリストアを容認する方針だと報じていた。

EUのデジタル市場法とは

 EUのデジタル市場法は域内で数カ月内に一部施行され、24年に全面的な適用が始まる。同法は、アップルやグーグル、米アマゾン・ドット・コム、米メタなど巨大プラットフォーマーの市場支配力に制限をかけ、競争阻害行為の抑止を狙っている。時価総額が750億ユーロ(約10兆8000億円)以上か、EU域内の年間売上高が75億ユーロ(約1兆800億円)以上の巨大企業を「ゲートキーパー(門番)」に指定し、ルールを順守させる。

 ゲートキーパー企業は、自社の製品やサービスを、プラットフォームに参加する他社の製品/サービスよりも優遇することが禁じられる。違反すれば、世界年間売上高の最大10%の罰金を科される可能性がある。また違反が繰り返された場合は上限が20%に引き上げられ、企業買収(M&A)が禁じられるなど他の罰則が科される場合もある。

 アップルはこれまで一貫してサイドローディングを認めてこなかった。だが関係者によれば、23年に配布する次期OS「iOS 17」の欧州版でこれを容認する方針。欧州の利用者は外部の開発者(サードパーティー)が提供するアプリをApp Storeを介さずにダウンロードできるようになる。