21年4月には韓国の英字紙コリア・タイムズが、アップルと韓国LG電子関連会社によるEVの生産委託交渉が合意間近だと報じた。またロイターは21年6月、アップルが中国の電池メーカー大手、寧徳時代新能源科技(CATL)や比亜迪(BYD)とEV用車載電池の調達に向けて初期段階の協議を進めていると報じた

プロセッサー性能は最上位Mac4台分

 ブルームバーグの今回の報道によると、アップルカーの心臓部はコードネームで「デナリ」(北米最高峰のデナリ山にちなむ)と呼ばれる車載コンピューターシステムと、一連のカスタムセンサーだという。プロセッサーの性能はパソコン「Mac」の最上位モデルに搭載されるプロセッサーを4つ合わせたものに匹敵する。プロセッサーの開発は最終段階にあり、ほぼ生産準備が整っているもようだ。ただし、アップルは車両の販売価格を抑えるためにその性能を下げる可能性があるともブルームバーグは報じている。

 このほか、3次元センサーの「LIDAR(ライダー)」とレーダーセンサーをカメラと組み合わせる。これにより、車の位置や走行車線を確認し、他の物体や人からの距離を測定するという。

 システムにはクラウドベースのAI(人工知能)処理用装置も含まれる。アップルはそのホスティングサービスを米アマゾン・ドット・コム傘下の米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)に頼っており、開発段階ながらも年間約1億2500万(約170億円)のコストをかけている。しかし、これは同社が自動車開発プロジェクトに毎年費やしている約10億ドル(約1400億円)の一部にすぎないとブルームバーグは指摘する。

 このほか、緊急時に遠隔で車を制御するリモートコマンドセンターの開設や、アップル独自の自動車保険についても検討しているという。

 車両デザイン部門は、米自動車スタートアップ企業のカヌー(Canoo)の元CEOであるウルリッヒ・クランツ氏と、テスラやイタリア・アウトモビリ・ランボルギーニ、独ポルシェの元マネジャーらが率いている。システムソフトウエアはテスラ元マネジャーのスチュアート・バウアーズ氏が、安全工学・試験・規制問題は米フォード・モーターの元幹部であるデシ・ウジカシェビッチ氏が担当しているという。

 ブルームバーグは、「何年にもわたり進められているアップルの自動車開発プロジェクトは、同社に新たな収益源をもたらすことを目的としているが、同時にその能力の限界を試すものでもある」と報じている。このような技術的障壁には他の大手も悩まされている。アップルも同じ課題に直面しているという。