定速混流ハイブリッド生産方式で生産性向上を目指す
ここでは多品種少量のなかで、いかに1個流しに近い形で生産するかに頭を悩ませる組立職場を例に、改革方向性を示す。改革コンセプトとして「定速混流ハイブリッド生産方式」を提唱したい。
定速とは目標サイクルタイムを基礎とした一定のスピードで流すことであり、混流とはさまざまな品種が同じラインで流れている状態のことである。そして、ハイブリッド生産とはライン生産とセル生産の混合形態を示している。
図に示すように、多品種の職場では<すべての工程(あるいは作業ステーション)を目標サイクルタイム内に収めるような作業設計>は構築しにくいのが実態である。
そこで、目標サイクルタイムに収まらない作業がある場合はセル化やサブライン化を行う(図上のAFがセル化、BCがサブライン化)。セル化かサブライン化の選択は仕様差が大きい工程かそうでないかに着目し、どちらかを選択するとよい。仕様差が大きい場合は、作業時間の変動が起きやすいためメインラインの速度に間に合わない可能性があるので、セル数の調整により生産能力に弾力性をもたせることを目的にセル化を推奨する。逆に仕様差は少ないがメインラインの速度に間に合わないときは、サブライン化でオーバーした分を吸収することおすすめする。
次にエンジアリングチェーンの再構築が重要となる。多品種のなかでハイブリッド生産方式を実現するためには、品種間で異なる作業工数を把握する。さらにどの工程をどの作業ステーションで行うか最適化な割付を行い、いかに定速状態を維持するかが肝となる。
そのためにはE-BOM、M-BOM、BOPの情報を連携させ、標準時間テーブルを活用しながら品種ごとの標準時間を設定することが必要となる。ラインバランスが品種ごとに計算され、製造指示書にその情報が記載され、現場が混乱することなく指示される仕組みを構築する。
しかし、この仕組みの構築には多大な労力がかかるため、結果としてロットまとめ生産方式に陥ってしまう。これらの情報が全く整備できていない、属人化していて標準化されていない、情報の一元化ができない職場は多分にある。エンジアリングチェーンの再構築には相当なコストがかかるが、製造現場およびスタッフの生産性を飛躍的に高めるためには必須の取り組みである。
将来的にはERP、MESとも連携させてシームレスに情報をやりとりし、人が介在することなく工程設計、作業設計ができることでさらなる高効率な生産システムを構築することが、これからの目指す方向性である。いわゆるDX化の一つであるが、まずは自社のロットまとめ生産の問題を再度認識し、自社はどのような生産方式を目指すのか、ビジョンを共有化することから進めることを推奨する。
大森 靖之(おおもり やすゆき)
生産コンサルティング事業本部
プロダクションデザイン革新センター長
チーフ・コンサルタント
収益向上シナリオ、全社コストダウンシナリオの策定および実行支援を強みとし、経営成果を意識したものづくり改革を支援している。新工場建設は多くの業界で実績を持ち、クライアントの生産戦略、生産システム革新、実行について支援している。新工場建設、生産システム改革、BCP策定支援、生産管理システム導入支援、原価管理システムの再構築支援、在庫削減・適正化支援、収益向上シナリオ策定と実行支援 など