作成した故障記録、使われているか

 保全部門は設備を故障停止させたら怒られる。かといって今日一日設備を停止させなかったからといって、それが当たり前と褒められることはない。サッカーでいうとゴールキーパーのような責任のある大変な仕事だと思う。
 過去の故障記録の内容を分析し、保全の弱点を把握し改善することで、保全管理のレベルアップを目指すことが、不必要な設備停止を防ぐためには必要となる。

 しかしながら現実はどうだろうか。設備トラブルが多発し、保全員は一刻も早い復旧が優先され、それにかかりっきりになっている。その忙しい中に故障内容を記録することになるので、その内容は処置内容のみといった最小限で終わっており、原因究明や分析に必要な情報としては不十分である。

 このような経緯で蓄積された情報のほとんどは結果として利用価値が低い。せっかく残した記録が故障件数の把握以外では使われることなく、たんすの肥やしならぬデータサーバーの肥やしとなって奥底に眠ってしまってはいないだろうか。このようなもったいない実態を筆者はよく目にする。

何のために故障記録を取るのか、何を分析したいのかが不明確

 故障記録が活かされずに肥やしとなってしまう理由の一つとして、「故障記録の目的が曖昧」であることが考えられる。
 記録データをその後どのように使うかをしっかりと考えていないため単なる実施記録にしか使用されていない。そのために層別分析などに必要な項目も不足しており、保全管理の強化のために分析をしたくてもできない、質の低い肥やしの情報が積みあがっていく。

 また、しっかりと記録されていても「言語データの標準化」が不十分で分析に使えないこともある。例えば、大文字・小文字や英名・和名、部品名・商品名等、表現のバラつきや入力する人の経験値によって同一の故障内容でもまったく異なるデータとなる。これらが混在していると当然層別分析・検索が困難となり、これも使われないデータの原因となっている。