故障が起きたら保全にすべてお任せ?

 生産職場は納期が最優先という観念であり、故障を未然に防止する思想がそもそもない場合がある。設備は「使いっぱなし」「壊れっ放し」で、毎日のように発生する故障は「後追い対応」になっていないだろうか。

 先日もこんな場面に出くわした。

 搬送設備で保全マンが、一人でスプロケットを交換していた。聞くと、「長時間停止しており、緊急で修理になった」とのこと。チェーンに要求される性能が苛酷になればなるほど、潤滑の重要性は高まるが、チェーンを見てみると、給油は実施してない様子だった。ところが、日常点検基準書を見てみると、給油箇所には確かに〇と記してある。

 修理していた保全の方に、「日常点検基準に給油項目は、〇となっていますが?」と恐る恐る質問を投げかけた。すると「一応そうなっていますね。確実に給油できていれば防げた故障なんですけどね。ここはよく再発する故障なんですよ」と言い、復旧を終え、ヘルメットをかぶり直し、さっそうと次の現場へ向かってしまった。

 現場からすれば「ISOの規定にあるが、生産時間が追われている。うそでも点検項目にチェックしておけばいいや」「上司も忙しいのでどうせ見ない。壊れたら保全が何とかしてくれる」という気持ちがあるのではないだろうか。しかし、保全からすれば「点検や簡単な交換くらいは、製造でやってほしいよ」との声もある。

 これは負のスパイラルから脱却できず、従来の仕事のやり方を漫然と「忙しい」を理由に踏襲しているだけと言えるだろう。