改善効果が大きければ大きいほど、優先順位が高い?

 いざ「改善活動をスタートしよう」となった時に、みなさんの職場ではどのような考え方に基づいて活動の優先順位を決めるだろうか?コンサルティングの現場でよく聞かれるのは、「優先順位は各職場、各工程のロスの大きさ、言い換えると改善に取り組んだ時に見込める成果量で決めています」というコメントである。(ちなみにロスの測定手法に関して現場管理者の感覚で推測している会社もあれば、IEなどの技術を活用して定量的に測定している会社もあると思うが、本項では測定手法そのものを論点とはしない)。
※IE=Industrial Engineering(生産工学)

 確かに、ロスが大きければ大きい工程ほど、改善がうまくいったときの成果は大きくなり、得られる現場の達成感も大きい。しかし、改善活動において本当に大事なポイントは、<工場横断でのスループット(時間当たり処理量)を最大化すること>にある。その観点でいえば、各工程のロスの大きさそのものは、実は最優先すべきポイントではない。

 併せて、同質の問題を抱えている事例をもう一つ紹介する。実際に現場をまわっていると時折、工程間の仕掛品が数日分たまっている場面に出くわすことがある。理由を聞いてみると、「頑張って役員を説得してこの設備を導入したんです!すごい生産スピードでしょう!」と誇らしげに仕掛品が生じている理由を解説してくれるのだが、この事例も先ほどの優先順位付けの話と同様、スループットを考えていない誤った取り組みといえる。個別工程の生産能力をどれだけ引き上げたとしても、ボトルネックを超過した能力はムダにしかならない。それどころか、場合によっては不稼働在庫として廃棄になってしまう可能性さえある。こういった事例は、枚挙にいとまがない。