実績収集しても改善にむすびつけられない作業日報

 生産に費やした時間や生産数など実績の収集手段として、作業日報を作成している工場は多い。作業日報は現場で作業者が紙にペンで記入し、後日記入されたデータをエクセルや生産システムへ入力するケースが多い。昨今IoT技術が発達してきているが、まだまだ自動収集のレベルまで達している工場は少ないように感じる。

 単に作業日報と言っても、企業によってはさまざまな問題・課題を抱えている。

①データを多く収集しようと実績の入力項目を多く設定している。しかし、現場作業を半ば無視した設定のため、作業者がすべての記録ができない(最低限の項目のみ入力)状態となっている

②収集したデータを基に工場間比較を行うが、工場によって生産特性が異なっているため、一辺倒の見方のみで正しい評価ができない

③数量や回数の記録のみで作業内容や作業時間の記録がない


 ①については、必要最低限の記録のみに留め、もし必要であれば作業者が記録せずともよい方法(IoTツール活用など)を検討するべきである。

 ②については、工場によって生産特性が異なる場合、同じ軸で評価することが適正であるかということを再度考える必要がある。例えば、生産性、品質、納期など、生産特性を考慮したグループごとに評価するなどの方法がある。

 ③については、特に積極的に記録するべきである。 作業者は自分のミスや工程の遅れを見せたくないという思いもあり、日報に悪さ加減を記入する項目がそもそも設定されていないこともある。作業におけるロス、手待ちややり直し、故障等が発生しているにも関わらず、可視化していないのは非常にもったいない。よい日報は改善の宝庫なのである。

生産現場の「もったいない」はなぜ起きる?

 前述した①~③の現象がなぜ起きるのだろうか。その原因を見ていこうと思う。

 まず、原因の1つに「作業日報の目的が数量管理のみになっている」ことが挙げられる。生産実績を把握し、計画通りに数量があがったかを見るだけで終わってしまい、「作業の日報」にもかかわらず作業改善につなげていく発想がない。

 2つ目は「作業者に作業日報の目的をきちんと伝えていない」ことが考えられる。作業日報は「改善するために、実態を可視化する」ことが目的である。悪さ加減を日報に記入することで、作業者自身が責められる風土になっていれば、当然作業者は正直に記入しない。現場で100%働いているように見せたいため、1日の作業時間=勤務時間と一致しているように加工して、生産に費やした正確な作業時間が分からない状態になる。

 情報入力の仕方によっても、「もったいない」ことが起きている。生産期間が長い製品の場合は、実績が%のみで時間がないため、結果進度しか分からない。逆に生産期間が短い製品の場合、製品別の作業時間はあるが、その内訳が不明であるため、作業におけるロスが分からない。
 いずれにしても現場の良い悪い含めた実態を表す情報があがらず、作業のロス改善につなげられていないのである。