生産現場におけるロスを定義する
作業日報の効果的な活用として、生産数量を管理することに加えて、「稼働状況」も一緒に見るべきであると考える。仕事をしている時間(稼働)と仕事をしていない時間(不稼働)に分けて作業を定義する。計画不稼働、前工程からの材料・部品待ちや設備故障などによる手待ち、朝礼や打ち合わせなど、直接的に製品に価値を与えていない業務も場合によっては不稼働に含める。
稼働は、加工や組立等、直接的に製品に価値を与えている作業である。もし可能であれば、加工や組立を補助する作業(別作業所への歩行やモノの運搬など)は分けて実績をとることで、発生比率の大きさにより「もっと距離を短くするにはどうすればよいか」と、レイアウト変更やモノの配置の改善着眼が得られる。
稼働、不稼働の作業項目の設定は、作業者と管理者で観点が異なる。一般的に作業者は加工・組立で良品製造とそれ以外の作業で作業項目を設定する。しかし、管理者は種類別の手待ち(機械故障、欠品、作業指示待ちなど)、作業指導、上長指示作業、会議、不良手直し、工場行事などの作業項目を設定する。 より細かく作業が取れれば尚よいが、これは作業者の日報入力の負荷とのバランスを考えることが必要である。また、実績収集を作業者自身が日報に入力するのではなく、センサー、動画、AI判定などIoTを活用することで作業者に負担をかけずに行える仕組みを目指したい。
この指標の推移を把握し、総合能率が低下しているのであれば、何か悪さが発生していることと捉え、内訳として作業能率が影響しているのか、または稼働率が影響しているのかを分析する。さらにその内訳とブレイクダウンしながら、問題を明確にしていくことが求められる。
作業日報で収集する作業項目は細分化すればするほど、分析としては活用できるが作業者の記入する負担が増加する。作業日報の設計者は、現場で発生している問題仮説を持ちながら作業項目を設定する必要がある。粗く収集する部分と詳細に収集する部分を見極めながら、自職場に適した作業項目を設定するべきである。
また、作業日報による情報収集方法も、なるべく作業者や管理者の負担にならないように取ることが求められる。収集ツールも紙ではなく、直接PCに入力することで紙からの転記をなくす。PCで管理することで、集計やグラフ化が容易にできる。さらに、タブレットでアプリを活用する方法もある。作業者が手動で時間を入力するのではなく、ボタンを押して作業の開始・終了を自動で記録するなど、工夫を志向したい。IoT技術革新により、今後はAIにより作業を自動判定することで、作業者が直接入力すること自体がなくなるかもしれない。
どのような方法であろうと、作業者や管理者のデータ入力という工数をなるべく減らし、本来の目的であるデータの分析や改善検討、それらの実行に時間を使うべきである。作業日報は実績の収集のみならず改善に活用することが大切である。そのためには、実績の収集は改善に使えるような情報を取れるよう、かつ、作業者の負担を減らすように設計したい。
コンサルタント 白濱匡晋(しらはま まさくに)
生産コンサルティング事業本部
プロセス・デザイン革新センター
チーフ・コンサルタント
生産財、サービス分野における事業戦略立案、ビジネスプロセスマネジメント、品質保証体制構築、SCM改革を専門領域として活動中。経営目標の達成に向けたQCDバランスを適正に保つマネジメント機能を設計することを課題とし、コンサルティング活動を行っている。