「カネ目」で成果を語れない製造現場

 まずは製造現場の改善活動報告会でよくみられる光景を紹介したい。各職場の代表が気合を入れて壇上に登場し、各々が取り組んできた素晴らしい改善例を報告する。一通りの報告を受けた経営者からひと言、「なるほど、非常によい取り組みをしているようで何より。ところで、その改善成果はお金に換算すると一体いくらのコストダウンになったんだい?」。報告者は即答できず、押し黙ってしまう。

 このような状況が生じてしまう理由はただ一つ、「モノ目」と「カネ目」のつながりをつける取り組みができていないためである。どれだけよい改善活動を行っていたとしても、最終的にその取り組みが経営成果、すなわち「カネ目」に寄与していなければ、経営者からの本当の意味での評価を得ることはできない。

 よく生産性向上活動の成果として「労働生産性〇%向上」などが報告されるが、その内容は主に工数や数量、すなわち「モノ目」が中心で、往々にして製造原価(経営成果)への効果が不明瞭なことが多い。

 たとえば「サイクルタイムを短縮して労働生産性を向上させる」という改善活動に取り組む場合、その改善活動で確かに生産活動に必要な工数(=モノ目)は低減するものの、他に何も取り組まなければ生産しない時間が増えるだけで労務費は当然そのまま、経営者が求めている経営成果(=カネ目)にはつながらない。「ロットサイズアップによる日当り付加価値額向上」や、「勤務時間短縮による支払労務費減」など、生産性向上活動により生まれる余剰工数の有効な使い方も計画・実践して初めて、本当の意味での生産性向上が実現するのである。