デジタルによってどんな変革を起こすかが重要

――DX推進の成果を感じるところは?

飯田 新たなDXの施策展開として、7月より大手町郵便局で「みらいの郵便局」の実現に向けた実証実験を本格開始しました。デジタル発券機やセルフレジのほか、保険や金融の相談に関してはリモートブースで専門家から詳しい説明を聞くことができます。実際にお客さまに体験していただいたり、社員からのフィードバックを受けて磨きながら、どんどん拡大していくのが目標です。

 また、郵便局にAIカメラを設置することによって、混雑する時間帯やお客さまの動線などの解析をしています。その結果から、例えば都心のビジネス街にある郵便局ではどういうお手続きが多いのかといったことをデータとして捉えて、「今度、この郵便局はこういうレイアウトにしましょう」といったことに生かせるわけです。このように、感覚ではなくサイエンティフィックに活動につなげていきたいなと。それを象徴的に示した実証実験郵便局で、われわれが行おうとしている郵便局のDX施策を示すことができたのは、成果の一つだと思います。

――DXを推進する中で、直面した課題はありますか。

飯田 辛抱強くやっていかなければいけないと再認識したのは、日本郵政グループという巨大な組織では施策の展開に時間かかるということです。「全国2万4000局に、来月からセルフレジを導入します」と言っても、それは難しいことで。デジタル技術を使った新しい取り組みをできるだけ早く全国のお客さまに届けたいという思いがあっても、物理的な制約から数年後になってしまうといったところにはジレンマもありますが、諦めたら終わりですので。どんなに時間がかかっても、必ず実行するという意気込みで取り組んでいます。

――今後の取り組みについて教えてください。

飯田 永遠に進化し続けることを前提に、まずは中期経営計画「JPビジョン2025」で宣言した内容を2025年までに完遂します。それ以降は3年、5年といったスパンで目標設定をしていくと思いますが、何よりもその時代ごとに、「郵便局って便利だね」「郵便局にこのサービスがあってよかった」とお客さまに思っていただけることが一番大事です。技術が進化してどんどん変化していく中で、お客さまのニーズや期待値に後れを取らないようにサービスを提供していきたいですね。お客さまが郵便局に対して不便を感じている部分は、一刻も早くマイナスをゼロにして。さらにプラスで、「郵便局でこんなことができるようになったの」という新たな期待を作れるように注力していきたいと思っています。

――DXへの取り組みに悩んでいる企業にアドバイスをお願いいたします。

飯田 企業にとってデジタル技術の活用は必須の時代ではありますが、それが目的ではなく、デジタル活用によってどんな変革を起こすかだと思います。特に日本郵政グループのように、歴史が長くて大きな組織はカルチャーとマインドセットを変えることがチャレンジですが、これをやらなければどんなに素晴らしいデジタル技術を持ってきても宝の持ち腐れになってしまいます。

 「これを全部やりますよ」と大風呂敷を広げるのではなく、「ここがよくなりましたよね」という小さな成功体験の積み上げが大事。小さなことでも、成功すると「あっ、こんなこともできるんだ」と人の気持ちが変わってくる。逆に言えば、「どうせ変わらないよ」という気持ちを変えたい。組織が大きくて歴史が長ければ長いほど、最初から諦めている人が多いと思うので。1人でも多くの人が、自分たちでも変えられるのだというマインドセットに変わることが第一歩だと思っています。

――JPデジタルの社員は、そこはもうクリアしていると。

飯田 そうですね。私が毎日のように発信しているので、かなりマインドは変わってきたと思います。それを数年後、出向元に持ち帰って、そこの部署も変化するのが理想ですよね。せっかくJPデジタルで新たな体験をしてマインドセットが変わったのに、元の部署に戻ったら以前の通りでは意味がありませんから。特に若い社員たちには、どんどん動いて変革を起こしてほしいですね。私がやれるのは本当に限られたことですが、どこかで誰かがやり始めなければ変わらないので。その道を切り開くお手伝いをさせていただいているということでしょうか。