面積で山手線内の半分

 アマゾンは新型コロナウイルス禍のEC(電子商取引)需要増に対応するため物流施設を急拡大してきた。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、同社は20年から22年3月までに倉庫や仕分センターなどの物流拠点を数百カ所新規に開設し、同期間に従業員数を2倍の160万人超に増やした。この施策が奏功し、売上高は20~21年に60%以上増加し、利益は3倍近くに増えた。

 カナダのサプライチェーン・物流コンサルティング会社MWPVLインターナショナルによると、アマゾンの倉庫スペースの総面積は、新型コロナ感染拡大前で15.3平方キロメートル(東京ドーム約328個分)だった。これが22年5月までに35.2平方キロメートル(東京ドーム約753個分)へと急拡大した。山手線の内側面積の約半分に相当する。

倉庫の余剰空間を賃貸し

 しかし、その後のEC需要は成長が鈍化している。人々が対面での買い物に戻ったほか、急激なインフレ進行による消費の冷え込みなどが要因だ。その結果、需要はアマゾンの予測を下回り、同社物流施設の収容能力が過剰になった。

 これに先立つ22年5月、アマゾンが余剰倉庫スペースの削減を計画していると、ウォール・ストリート・ジャーナルやブルームバーグ通信が報じていた。報道によると、アマゾンは少なくとも1000万平方フィート(約92万9000平方メートル、東京ドーム約20個分)のスペースをサブリース業者を通じて賃貸しすることを目指している。賃借物件についてはリース契約の終了、または再交渉を検討している。これに伴いアマゾンは新たな施設の建設を一部中止、延期した。

 しかしウォール・ストリート・ジャーナルによると、「アマゾンは依然として、自社物流能力を強化するための、広範に及ぶ取り組みを推進中だ」と専門家は指摘している。アマゾンが中止したり延期したりした拡張計画は、特定のタイプの施設のみを対象にしているに過ぎないという。

 MWPVLインターナショナルの創業者でプレジデントのマーク・ウォルファート氏は、「どんなに想像力働かせても、アマゾンが急ブレーキをかけているとは思えない」と述べている。

 (参考・関連記事)「アマゾンの物流投資が後退、倉庫の余剰空間賃貸しへ | JDIR