消費者の購買行動が変化する中、実店舗の存在意義が問われている。そんな中、新たなアプローチでビジネスを展開している企業がある。それは、北川卓司氏がCEOを務めるベータ・ジャパンだ。オンラインショップでは得られない消費者の購買データに着目。「売ることを主目的にしない店舗」という新しい概念をつくり上げ、商品の体験と発見の場としての実店舗の価値を見いだす。シリコンバレー発の体験型ストアは変化する消費者の購買行動をどのように捉えようとしているのか。北川氏が事例を交えて解説する。
※本コンテンツは、2022年3月25日に開催されたJBpress/JDIR主催「第7回 リテールDXフォーラム」の特別講演Ⅱ「シリコンバレー発、体験型ストア『b8ta(ベータ)』が創出する実店舗の新たな価値」の内容を採録したものです。
リテールを取り巻く環境の変化
デジタル化が進む中で、店舗で買い物をするより、スマートフォンからオンラインで購入する消費者が増えている。多くの企業がオンラインの販売チャンネルを増やす中、ベータ・ジャパン株式会社でCEOを務める北川卓司氏はあえて店舗を出し、新たな価値を提供しようとしている。
北川氏は、「Retail designed for discovery」をミッションに掲げ、「発見と体験」を主軸に置いた店舗展開を行っている。今までは販売を主な目的にした店舗が大半で、売り上げが直接、収益につながるモデルだった。そこで展開されるあらゆる施策は「いかに多くの消費者に買ってもらうか」をゴールとしてきた。しかし、北川氏が手掛ける「体験型ストア」では、物を売ることを主目的とせず、ECサイトに出店する程度の費用で、実店舗での出品を可能にしている。あくまで消費者に対する「体験訴求」が目的だ。
オンラインショッピングでは、過去の行動履歴に基づいたレコメンドなどに追い掛けられ、なかなか新しい商品にたどり着けないことも多い。さらに、高額商品を購入する決め手となる「体験」ができないため、消費者がなかなか購入に踏み切れない。一方、実店舗では、体験はできるものの店員の接客によって心理的なプレッシャーを感じ、後で買わなければよかったという感情を抱くこともある。
こうしたオンラインの手軽さ、費用の安さと、実店舗の充実した体験、購買データの抽出といったメリットを両立しようというのが、「b8ta(ベータ)」だ。