イノベーションラボの様子。ドローンアップ社ブースの前。〔出所〕NRF2022ビッグショー。撮影:ジェイソン・ディクソン

 今、注目されているリテールテックのスタートアップ企業を集めたイノベーションラボには、今年55社が参加した。多くの企業が投資グループから数ラウンドの資金調達を果たしており、既に大手チェーンストアと試験段階に入ったり、2020年以降、市場に出て急成長中という企業が多い。その中から、すぐにでも消費者の買い方を変えていきそうな企業を紹介したい。

ロボマート:レジレス移動販売車

ロボマートの移動販売車。現在は高級感を出すためにメルセデスベンツにも店舗設備を搭載。〔出所〕:会場にて著者撮影

 昔ながらの移動販売車をレジレスにしたのがロボマートの製品だ。バン内部に2立方メートルの棚が設置されており、コンシューマーパッケージドグッズなら50SKU、250~300点、薬剤なら50アイテム500パック収納が可能だ。この移動店舗はアプリで車を呼び出し、到着したらドアをアプリで開錠、欲しい商品を取って施錠すると自動的にRFIDタグによって課金される、というレジレス移動店舗だ。

 当初は車も自動運転を計画しており、2019年にストップ&ショップと提携しボストン市内で実証テストを行う予定だったが、市から自動運転車が公道を走行する許可が下りず、2020年末に場所をカリフォルニア州ウェストハリウッドに移し、自動車も人による運転に変更、ファーマシー販売車としてテストを開始した。翌2021年1月にはスナック車の営業も開始しており、2022年から2023年にかけてニューヨーク市内でもテスト営業を予定している。現在、LAには50カ所の営業地域があり、各地域に1カ所のハブを設営し、1~2時間ごとに商品補充を行う。アイスクリーム、生鮮食品、ファーストフード用の車も開発中で、年内にカフェも営業開始の予定だ。

 この移動店舗のメリットは、リテーラー側には①宅配より配送効率が500%向上、②平均客単価が上がりやすい、③二酸化炭素排出の面で宅配よりサステナブル。消費者側には③Eコマースより早くショッピングが終わる(平均買物時間9分、最短2分)、④非接触、だ。

 日本でセブン-イレブンが人口減少に伴い、小売店の少ない地域で移動販売車(注:レジレスではない)による営業を行っていることを伝えると、同社チーフコマーシャルオフィサーのジャヴィエ・セゴヴィア氏は「当社はむしろ都心など人口密度の高い地域をターゲットとしている」とコメントした。同社は今後、海外を含めた営業地域の拡大および取り扱い商品領域の拡大を目指していく。また、自動運転車への切り替えにもタイミングを見て再挑戦する意向だ。