■〔シリーズ〕DX企画推進人材のための「ビジネス発想力養成講座」はこちら

 この連載はDX企画、推進人材が身に付けるべきビジネス発想力の養成を目的としている。DXやデジタルビジネスの成功事例には「ビジネスの仕掛け」がうまく使われており、この連載ではそれが学べる。今回もビジネスの仕掛け(シェアリング、プラットフォーム、オンライン化、クラウドファンディング<購入型>など)を単体で、またはそれらを組み合わせてビジネスを発想する考え方や事例を解説していこう。

 今回のテーマは「シェアリング×データ活用力」である。ビジネス文脈でいう「シェアリング」とは、自己の持つ余剰資産(モノ、場所、スキルなど)を他者に提供し、対価を得る「ビジネスの仕掛け」であり、持っていても使わない余剰資産を売るため、「対価が低くても取引が成立しやすい」という特性を持つ。

 もう一方の「データ活用」についてはあまり説明はいらないだろう。お客の購買記録データや嗜好アンケートなどを取得し分析することで、お客が何を好むか、どのような商品を買いそうか、いくらまで払えそうかなどを予想し、それに合う商品・サービスをレコメンド(推奨)するなどに使う「ビジネスの仕掛け」である。

 例えば、「あなたには小学生の子供がいて、その子の将来に備え、社会活動をやらせて人間性を高めてほしい」と思っているとする。どのような社会活動が良いかをネットで検索すると集団で行うキャンプ、ボランティア活動、旅先の人と交流する「ひとり旅」などがある。どれも良さそうだが、決め手がなくどうしようか迷う。

 そこで、これらキーワードで再度検索し、見つけたサイトに会員登録した。互いに知らない子供だけの集団キャンプに参加した子の体験談、子供にボランティア活動をさせている親の感想、ひとり旅から帰って子供がたくましくなったと喜ぶ親子の写真、どれも良い内容で興味深い。

 最も良かったのは、「子供と親の満足度などのデータが充実」していることだ。定期的に社会活動をしている子供や親のデータが数値化されてグラフで見られるようになっている。あなたが子供にやってほしい活動ごとに、いろいろな切り口でデータがとれ、レコメンドされるから選びやすい。

 あなたは子供と相談の上で一番推奨度が高いボランティア活動の半年コースを申し込んだ、、、データを提供したサイト会員の子や親にはデータを提供した対価として次回の活動が割引になるポイントが付与される、、、これが「シェアリング×データ活用」の事例である。

 上記の事例では、データがどのように活用されているかは分かりやすいだろう。では、どこがシェアリングなのか。シェアリングとは、自分で持っていても使わない余剰資産を生かす概念である。この事例では子供や親が満足度データをサイトに提供しており、これはデータの「シェアリング」と言える。

 「シェアリング×データ活用」を成功させるには、まず「データを集める」ことが必要になる。この場合、多くの企業は、データを自社の社員を使って集めるか、よそで売っているもの買うしかないと考える。しかし、これでは手間とお金がかかって気軽にデータを活用することができない。

 そこで、データを集めるために「シェアリング」を使う。お客の感想や意見、満足度を数値化したデータは大変有効なマーケティングツールであるが、お客にとっては余剰資産である。このように「シェアリング」と「データ活用」は相性の良い組み合わせである。この事例を説明したい。

スーパーに「価格で勝てない」八百屋の息子は・・・

 ある町に小さな八百屋があって、市場で仕入れた野菜や近所の農家から持ち込まれた野菜を売っていた。以前は近所の人に多く売れていたが、高齢化で昔なじみが減り、若いお客はスーパーマーケットの安い野菜を買うので、減ったなじみ客相手に細々と商売をする日々である。

 この状況で、現店主の息子があとを継ぐことになった。息子はこのままでは先がないと思い、野菜の他に違う商品を売ってみたが、どれもうまくいかなかった。困った息子は、どうすれば良いかを知り合いに考えてもらうことにした。

 指名した人は2人。1人は大学時代の友人のマーケティング会社で働くAさん、もう1人は近所の兼業農家のBさんだった。