低価格端末メーカーに影響及ぶ

 中国TFインターナショナル証券アナリストのミンチー・クオ氏などの専門家によると、需要減による打撃を最も早く、最も大きく受ける可能性があるのは低価格端末だという。所得水準が低く、より安価なスマホを購入する傾向のある消費者層は、先行き不透明の経済状況に敏感で、支出を抑える人が多いという。

 これにより打撃を受けるスマホメーカーは、中国の小米やOPPO(オッポ)、vivo(ビボ)など。アップルの製品ラインアップは高価格帯であるため、影響を受けにくい。だが、比較的安価な「iPhone SE」は打撃を受ける可能性があるとクオ氏は指摘する。

半導体不足とウクライナ侵攻に続く新たな問題

 世界のスマホメーカーとそのサプライヤー(部材メーカーなど)はこれまで、半導体不足やウクライナ侵攻の影響といった問題に直面していたが、これに中国での需要減という新たな問題が加わった。

 トレンドフォースによると、22年1~3月の世界スマホ市場は1年前から7%縮小した。同社は今年に入って、世界市場の予測値を2度下方修正している。22年における全メーカーの合計生産台数は従来予測よりも5000万台少ない13億3000万台になると同社はみている。

 一方、半導体受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は22年4月、スマホなどのコンシューマーエレクトロニクス製品用半導体の事業成長が鈍化していると述べていた。

 ロイター通信によると、iPhoneの生産の大半を手がける台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の劉揚偉・董事長(会長に相当)は先の決算発表で、「現在、市場には多くの不確定要素がある」と述べ、その要因として、新型コロナや地政学リスク、インフレなどを挙げた。

 鴻海は、22年4~6月期の、スマホを含むコンシューマーエレクトロニクス事業の売上高が前年同期から減少するとみている。同事業部門の売上高は鴻海の全売上高の半分以上を占めるという。

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